茨城の「ドクターK」がベールを脱いだ。つくば秀英(茨城)がエース野沢佑斗と戸塚岳(ともに3年)両投手の継投により、日立工を6回参考ノーヒットノーランで下した。今秋のドラフト候補にも挙がる右サイドの野沢は数球団のスカウトが視察する中、5回7奪三振と評判通りの実力を見せつけた。

 野沢がここ一番で集中力を発揮した。この日5四死球とまだ粗削りな最速142キロのサイド右腕は、「力んでしまった」と初回立ち上がりから連続四球。いきなりピンチを招いたが、武器の横スライダーとストレートで連続三振に仕留め、落ち着きを取り戻した。5回で降板するまで7奪三振の無安打投球。6回も戸塚が3者凡退に抑え、ノーヒッター継投の試運転になった。

 野沢は「茨城のドクターK」の異名を持つ。この日もスタンドには西武、阪神などからスカウトが視察に訪れたように、練習試合を含めた奪三振率は「11・66」。9イニング平均で約12個の三振を奪うように、投球回を上回る奪三振数が好調のバロメーターだ。練習試合では昨秋、強豪の帝京(東東京)から15奪三振、秋春県連覇中の中越(新潟)から14奪三振をマーク。今春も栃木8強の足利から19三振を奪うなど、ペースを加速させている。

 新球をマスターして投球の幅が広がった。「ストライク先行がモットー」と広島黒田を手本にし、本やネット動画などで黒田のツーシームを研究した。そこからヒントを得て今春、同じ軌道で変化するシンカーを習得。それまで左打者を苦にしていたが、外に逃げる勝負球に加わった。右打者のインコースにも投げ分け、内野ゴロも増えた。

 黒田の「男(おとこ)気」にもほれ込んでいる。無類のラーメン好きで、お年玉の貯金を切り崩してごちそうする太っ腹な心配りは、後輩から慕われている。チームは毎年のように優勝候補といわれながら、夏は県8強が最高成績。「夏は全試合完封するつもりで、防御率も0でいきたい」と宣言する野沢が、三振とともに白星も積み上げる。【倉田祥太】

 ◆野沢佑斗(のざわ・ゆうと)1997年(平9)11月6日、茨城・古河市生まれ。古河第六小1年から「古河プレーボール」で捕手として野球を始め、古河第一中では投手。つくば秀英では1年夏から背番号11。特技は縄跳び。二重跳びは連続242回、三重跳びは連続51回を成功させたことがある。趣味はナオト・インティライミの曲を聞くこと。右投げ左打ち。家族は両親、兄、妹。