「和製ベーブ・ルース」が、甲子園にやってくる。早実の注目1年生スラッガー、清宮幸太郎内野手が最初の夏に聖地への切符をつかんだ。全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)西東京大会決勝の東海大菅生戦に「3番一塁」で先発し、8回2死満塁でダメ押しの右前適時打。今大会6試合連続安打で、8回に5点差をひっくり返す逆転勝利に貢献した。

 歓喜の輪に加わった清宮の目から涙があふれた。0-5で迎えた8回、打者14人8得点の猛攻で逆転。東京都の高校野球歴代最多という2万8000人の大観衆の声援に「最高に気持ち良かった」と、7点目の適時打を放った。全員でつかんだ甲子園切符に「泣かないつもりだったけど、上級生の方が泣きながら『よくやった』と言ってくれて、もらい泣きしちゃいました。大会で泣いたのは初めて」。感情を抑えきれないほど、うれしかった。

 この決勝に懸けていた。早実初等部1年だった06年夏、早実対駒大苫小牧の決勝再試合をアルプス席で観戦。野球の道へ進むきっかけとなった。「今でもすごく鮮明に覚えている。自分の原点に戻って野球がしたい」。有言実行の男は、最初の夏に夢をかなえた。苦戦しながらも勝ち進み、最後に奇跡的な逆転劇を見せても「“持ってる”というか、実力だと思います。運じゃなくて、気持ちでも上回った」と言い切った。

 一流選手への道も、自力でこじ開けた。「人生が懸かっている試合だと思っていた。プロで活躍している方は、1年夏から甲子園で大活躍された。出ると出ないじゃ、本当に大違い」。かつてPL学園(大阪)桑田、清原の「KKコンビ」、星稜(石川)松井らが「スーパー1年生」と騒がれた。今大会20打数10安打の打率5割、10打点をマークした16歳は「まだ100%を発揮できていない。甲子園でも注目されると思うんですけど、暴れてきます」と宣言した。

 開会式で始球式を行うあこがれの大先輩、ソフトバンク王球団会長との対面も実現する。清宮は「同じ舞台に立てて光栄。バッティングを教えてもらいたいです」と笑った。残すは夏1号だけ。「甲子園に取っておいたっていうのもおかしいですけど、打ちたいですね」。高校野球100周年に、新たな怪物伝説が幕を開けた。【鹿野雄太】

 ▼新制高校となった48年以降、甲子園に5季連続で出場し、すべての大会で試合に出場した選手は80~82年早実の荒木大輔、小沢章一、83~85年PL学園の桑田真澄、清原和博、02~04年明徳義塾の鶴川将吾、梅田大喜、09~11年智弁和歌山の道端俊輔の7人。

 ◆ベーブ・ルースと甲子園 1934年(昭9)に大リーグ選抜の一員として来日。甲子園では11月24日に大リーグ選抜、同25日に日米混合の紅白戦でルース軍としてプレー。来日中は18試合で最多の13本塁打を放ったが、甲子園での2試合では出なかった。