最後の夏に満点デビューを飾った。三条東の背番号「10」、高藤暁投手(3年)が公式戦の初登板初先発で、高田農を3-0で完封した。6回に打球が右腕を直撃するアクシデントにもひるまず、5安打3四球で三塁を踏ませず。9回を投げ切っての完封勝利は今大会1号で、初完投初完封に満面の笑みだった。

 自然と口元が緩む笑顔には、一点の曇りもなかった。三条東・高藤は開口一番、「(快晴の)この空より、澄んでいます」と喜びを詩的に表現した。まさに一世一代の投球を、高校最後の夏に体現した。

 公式戦初マウンドは、初戦の先発という大役。球威はないが、コーナーにボールを集め、要所で力を込めた。最大のピンチは1-0の6回。強襲打が利き腕の右上腕を直撃し、2死一、二塁とされた。あまりの痛さにマウンドでうずくまり、冷却スプレーで応急処置。「それまで力が入りすぎていたけど、うまく抜けて腕が振れるようになった」とケガの功名? で左飛に仕留めると、ジャンプして雄たけびを上げた。

 「ベンチに帰ると痛かったけど、マウンドに上がると感じなかった。不思議な力を感じた」。8回も2死一、二塁をしのぐと、2度目の絶叫タイム。「練習試合だと怒られるけど、最後の夏なのでやっちゃいました」と笑い、5安打116球の快投に「完封までできて不思議な気分」と見えない力にも後押しされた。

 好調のきっかけは、6月上旬に行われた前橋育英(群馬)との招待試合。今春センバツ出場の強豪に2回7失点と打ち込まれたが、「思い切って腕を振ったら、意外にコーナーに決まった。感覚がつかめた」と自信をつかんだ。井田義明監督(52)も「高藤が3年生の意地を見せてくれた。それに尽きます」と感謝。見附南中では4番エースだった男は、「野球を始めて10年目。最後の夏に輝くことを信じていたから、結果を残せてうれしい」と、公式戦初マウンドの感慨に浸った。【中島正好】