巻総合が、春8強の第5シード校・長岡大手を4-2で下した。エース鏡理央(3年)が9四球を与えながら、被安打4の完投。初回に許した2点で抑え込んだ。

 巻総合の小林豊監督が男泣きした。人目を気にせず、声を上げて泣いた。「選手が一生懸命やってきた」。そう話して、続けた。「ちょっと涙して、いいですか」。第5シードの強豪・長岡大手に4-2で競り勝った。途中でまた、込み上げるものがあったのだろう。「もう1回、泣いていいですか」と涙を太い右腕で拭った。昨秋の1回戦は新潟青陵に2-3。今春は3回戦で日本文理に0-10の6回コールド負け。巻総合を率いて7年目の小林監督にとって、同校で初の16強入りだった。

 勝利に感涙した小林監督とは裏腹に、選手たちは平然としていた。エース鏡も、顔色ひとつ変えなかった。長岡大手最後の打者を左飛に打ち取り、マウンドを降りて原一騎捕手(3年)とハイタッチしても、表情を崩さなかった。「気持ちで投げた。守備に助けられた」。1、2回に4安打を許したが、3回からの7イニングは無安打に抑えた。8回は無死から連続四球を与えるなど、9四球で走者を背負った。しかし、相手は10残塁。粘投した。「次への期待を込めて、80点の投球」と自らを採点した。

 今春の1回戦、新潟向陽・阿賀黎明戦で5回参考記録ながら完全試合を達成した白根の和真投手(2年)は鏡の弟。「先にやられた」と話題になった弟には、負けられなかった。この日は9回159球を投げたが、162センチ、57キロの全身にはスタミナが詰まっていた。「ピンチの場面は集中する」と、上もしっかり見据えていた。【涌井幹雄】