三度目の正直だ。植田は丸太のような腕に力を込めた。「関口監督を胴上げして、日本一の男にしたい。東北初の優勝旗を持って帰りたい。ホームランが優勝への近道だと思う」。165センチ、73キロの小さな長距離砲の体には、夢とロマンが詰まっている。【高橋洋平】

<東北6校戦力分析>

 ◆盛岡大付(岩手)

 全国屈指の打線を誇る、今年のみちのく最強チームだ。岩手大会で放ったチーム10本塁打は、横浜(神奈川)の14本に次ぐ2位。植田以外にも5番松田夏生捕手(3年)が24打数16安打で6割6分7厘をマークし10打点。植田に代わって1番に定着した林一樹外野手(3年)が機動力を発揮し5盗塁。小技も利くいやらしい打者に成長した。投手陣は今春選抜8強に導いたエース左腕三浦瑞樹(3年)が健在。夏復活を果たした平松、今春から調子が上がらない臼井春貴投手(3年)が甲子園でも力を発揮すれば、盤石になる。

 ◆仙台育英(宮城)

 全国49代表の大トリを飾った。準決勝で再試合にもつれ込み、全チームで一番過酷な状況だが、前向きにとらえたい。大会序盤で制球が安定しなかったエース左腕長谷川拓帆(3年)が、再試合から見違える投球を見せ始めた。疲労がたまったことで逆に力みがとれ、結果的に本来の制球力を取り戻した。3日連続の先発となった東北との決勝でも8回まで無四球。課題が克服された長谷川に、主将の西巻賢二内野手(3年)、主砲の佐川光明外野手(3年)がスタンバイする。3人で過酷な夏を乗り切る。

 ◆聖光学院(福島)

 夏11連覇を果たした絶対王者は走攻守すべてに高いレベルでまとまっている。4人いる投手の中でもエース斎藤郁也(3年)と背番号10の前田秀紀(3年)の両右腕が安定しており、2枚看板を形成する。打線は矢吹栄希内野手(2年)と松本聖也外野手(3年)がキーマン。左打ちの1、2番コンビが出塁し、6月から主将を務める4番仁平勇汰外野手(3年)、打率5割を超える5番柳沼楽人内野手(3年)でかえしたい。ベンチ内でチームを鼓舞する斎藤智也監督(54)の機転の利いた采配も見ものだ。