花巻東が12-2で大船渡を圧倒し、2年連続10度目の甲子園出場を決めた。夏連覇は同校初。県北東部の久慈中出身の中村勇真外野手(3年)ら中学総体県準優勝メンバーが、同じ沿岸地区出身者中心の相手に奮闘した。

初回に中村主将が右前適時打を放てば、6回には山崎大翔捕手(3年)が走者一掃の右越え二塁打。中森至投手(3年)も先発して5回1失点と好投し、高橋凌内野手(3年)も好守で盛り上げた。疲労を考慮されて出場しないまま敗れた大船渡・佐々木朗希投手(3年)の分まで、県沿岸部などの思いを背負って「岩手から日本一」を達成させる。

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花巻東ナインが、大一番でこそ力を発揮した。優勝旗を両手でがっちりと受け取った中村勇は「球場全体が大船渡さんを応援している雰囲気でしたが、自分たちの野球をする執念で戦った」と喜びをかみしめた。「僕らは同じ沿岸地区の久慈市出身で花巻東に来たメンバーも多い。震災を経験したり、つらい思いをしたこともあった。大船渡の甲子園に行きたい思いも背負って、岩手代表として恥じない戦いをしたい」。堂々と言葉にした。

佐々木温存の相手に初戦から襲いかかった。無死一、三塁から一塁走者の高橋が盗塁。相手捕手の悪送球を誘って幸先良く先制した。中村勇の適時打で加点すると、2回には山崎のスクイズ、3回も中村勇の一ゴロなど無安打で追加点を奪う、そつのない野球も披露した。6回に走者一掃の適時打を放った2安打4打点の山崎は「地元を離れて寮生活をしている仲間と結果を出せてよかった」。捕手としても先発した左腕・中森ら投手陣を好リード。「それぞれ良さがあるので、気持ち良く投げさせて上げられたと思う」と攻守両面でチームを支えた。

7回には久慈コンビが足で翻弄(ほんろう)した。一塁走者の中森があえて一、二塁間に挟まれると、隙を突いて三塁走者の中村勇が本塁生還。相手投手交代直後の奇襲で、差を広げた。

初戦(2回戦)の花巻北戦では3-0の9回表に一挙4失点して逆転されたが、同裏に追いついて延長勝ち。黒沢尻工との準決勝でも1-5から終盤に逆転するなど、苦しみ抜いた初連覇だった。中村勇は「挑戦者の気持ちで、歴史をつくることができた。一回りも二回りも成長できた大会でした」。マリナーズ菊池雄星やエンゼルス大谷翔平を擁しても出来なかった県連覇。次は、佐々木や大船渡ナインの思いも背負って、「岩手から日本一」の目標に突き進む。【鎌田直秀】

◆花巻東 1956年(昭31)創立の花巻商(のちに富士短大付花巻)と、57年創立の谷村学院が82年に統合した私立校。生徒数は642人(女子272人)。野球部は56年創部。部員121人、マネジャー3人。甲子園出場は春3度、夏10度目。主なOBはマリナーズ菊池雄星投手、エンゼルス大谷翔平投手。所在地は岩手県花巻市松園町55の1。小田島順造校長。