第101回全国高校野球選手権が6日に甲子園で開幕する。5日には開会式のリハーサルが行われた。

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三塁コーチは「サード」に任せろ! 45年ぶり5度目の甲子園出場となった秋田中央(秋田)の加賀谷三亜土(さあど)内野手(2年)は、三塁コーチ、伝令としてチームを支える。

2年生ながら卓越した野球知識と広い視野を武器とする貴重な戦力だ。

明桜との県大会決勝でも、真価を発揮した。延長10回1死満塁のピンチ。二塁後方への飛球を右翼手の河野泰治(3年)が好捕。二、三塁の走者が飛び出していたため、二塁に送球し併殺。攻守交代で選手がベンチに戻りかけた瞬間、ベンチの加賀谷が叫んだ。「戻ってくるな!置き換え、置き換え!」。二塁のアウトよりも先に、三塁走者が本塁を踏んでおり、そのままナインがファウルラインを越えてしまうと、得点が認められてしまうところだった。その後三塁にボールが送られ、「第3アウトの置き換え」をアピールし失点を防いだ。これで勢いがついたチームは、直後にサヨナラ勝ち。久々の甲子園出場をもたらす目に見えないビッグプレーとなった。

昭和の野球漫画ドカベンでも描かれた難解なルールだったが、平成14年生まれの加賀谷は、しっかりと記憶していた。幼い頃から自宅にある沢山の野球漫画を何度も読みあさってきた。「明訓対白新で不知火さんがやられたのも覚えていた。こんなプレーがあるんだなあと」。高校入学後、佐藤幸彦監督(45)から細かい指導を受けるうちに、気付いたらあらゆる状況に対応できるまでになった。

野球大好き一家で育った。高校球児だった父、マネジャーだった母の影響で、金足西小2年から野球を始めた。ちなみに兄2人も奨人(しょうと)さんと千太(せんた)さんと、野球ネーム3兄弟だ。三亜土については「みんなに1回で覚えてもらうから気に入っています」と笑う。小6の秋田市選抜では「サード」を守ったこともあるが、現在の本職は二塁手。セカンドにボールが飛んでも「サード!」と声がかかるなどややこしい面もあるが、選手たちは慣れたものだ。

県大会での出場こそなかったものの、実力は捨てたものではない。中3の全日本春季少年軟式野球では、秋田クラブの主将として準優勝。佐藤幸彦監督(45)は「とにかく気が利く野球小僧」と大きな信頼を置く。熊谷郁哉主将(3年)も「誰よりもルールがわかっている。なくてはならない存在」と認める存在だ。背番号14で臨む甲子園に「チーム勝利のために、自分が何をできるかを考えて戦う」と献身的なサポートで47年ぶりの勝利を引き寄せるつもりだ。【野上伸悟】