2年連続10度目出場の花巻東(岩手)が、鳴門(徳島)に敗れた。先発の左腕・中森至(3年)が2回3失点。エース右腕・西舘勇陽(3年)も5回2/3を投げて6失点(自責4)と流れを引き寄せることが出来ず、2大会連続の初戦敗退となった。打線も10安打を放つも、運にも見放されて相手の好投手を攻略できなかった。

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西舘は最後までエースとして、もがき続けた。いきなり4番に左中間二塁打を浴びると、犠打後に四球と犠飛で点差を広げられた。今春の東北大会や今夏の岩手大会も、佐々木洋監督(44)は精神面の成長を願って、ピンチの場面からの投入を継続。「投球フォームを見つめ直し、意識しながら良い球が投げられるようになっていたので自信はあった。でも本番ではバッターを抑えることで頭がいっぱいで、フォームまで気にすることが出来ていなかった」。過去の失敗を繰り返し、放心状態で最後の夏が終わった。

大谷翔平投手(現エンゼルス)に憧れて、花巻東の門をたたいた。1年秋から140キロを超え、菊池雄星(現マリナーズ)らもつけた出世番号「17」を背負い「新怪物候補」の期待を得た。腰痛に苦しみ、過去2回の甲子園でも苦い思い出しかない。今冬の完治後は同監督と二人三脚で投球フォームを再構築。力みが生じると体がそってしまう悪癖解消へ、プレートからホームベース方向に白線を引いて徹底する日もあった。

5回には先頭を四球で出し、投前犠打を痛恨のエラー。「歴代の先輩たちがつけた1番の責任を果たそうと思ったけれど出来なかった」。1死満塁から2点適時打と犠飛を喫した。8回にも3連打。後輩左腕・小野寺輝(2年)にマウンドを譲るしかなかった。

中森も本来の制球力を欠いた。初回に3四球。2回には岩手大会まで使用していたグラブに変更してリズムを変えたが、多彩な変化球が精彩を欠き「昨秋の東北大会もあと1勝というところで負けてセンバツを逃したし、大舞台で自分たちの弱さが出た」と無念の表情。山崎大翔捕手(3年)も「自分の視野が狭くなった。もっと2人に自信を持ってやらせたかった」と悔いた。

打線は主将の中村勇真外野手(3年)が5回1死一、二塁から右翼線に2点適時二塁打を放って一矢報いた。「カウントを取るスライダーが意外だった。三振を取りに来る速い変化球を狙ったが、後半はストレート中心になり対応できなかった」。岩手大会で逆転勝ちを連発してきたが、終盤反撃も点差が大きすぎた。

全国で一番注目された岩手大会で佐々木朗希投手(3年)を擁する大船渡を破り、同校初の2年連続出場を果たしたが、屈辱の連続初戦敗退となった。西舘は「岩手の強さを甲子園で示せなくて悔しい。来年こそ後輩たちが勝ち上がってほしい」。岩手から日本一の悲願を託し、声を震わせた。【鎌田直秀】