奥川さんのために! 星稜(石川)が仙台育英(宮城)に圧勝し、スーパーエース奥川恭伸投手(3年)の完全休養に成功した。

前日17日の智弁和歌山戦で延長14回を投げ抜いた奥川は中2日で準決勝・中京学院大中京(岐阜)戦に臨める。公式戦初先発の今井秀輔外野手(2年)が満塁弾を含む7打点と大爆発。奥川を慕う2年生たちのパワーが投打にさく裂し、最高の状況を作り上げた。

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ダッグアウトの奥川は左翼ポール際への着弾を見届けると、叫び声とともに右手を突き上げた。3人の走者に続いてベース1周した今井は「ナイスバッティング!」と尊敬するエースに強く肩をたたかれ、顔をくしゃくしゃにした。チームを、そして奥川を救うグランドスラム。2回でリードを5点に広げた。

大阪市内の宿舎であった前夜のミーティング。林和成監督(44)が「明日は野手で勝つぞ」と強い口調で言った。誰もが奥川が先発でないことを悟った。野手陣は「奥川さんに頼ってばかりだからな。俺らが頑張ろう」と誓い合った。エース右腕は17日の智弁和歌山戦で延長14回、165球で1失点完投。154キロ連発でねじ伏せ、高校野球史に残る好試合を演じた。代償はもちろんある。常識的に2日連続の全開投球は無理だ。

何が何でも休ませたい。5点を奪っても攻撃の手を緩めなかった。今井は奥川から「調子がいいんだから思い切っていけ」とアドバイスを受けていた。3回にも2点二塁打。7回には適時三塁打。サイクル安打まであと単打1本、大会記録にあと1に迫る7打点の大爆発だ。背番号18の活躍に、打線も乗った。8回、9回に4点ずつ奪って、4本塁打を含む22安打17得点。奥川は4回に軽くキャッチボールをしただけで、肩を一度も作らなかった。

お立ち台の今井は「とにかくうれしい」とミッション成功を喜んだ。星稜は上下関係が厳しくない。奥川と行動をともにする2年生も多い。先発で好投した荻原吟哉や、公式戦で初めて2発を放った4番内山壮真内野手も仲がいい。今井は試合後の囲み取材中に「奥川から…あ、いや奥川さんから」とまさかの天然ぶりで大先輩との距離の近さ? を感じさせた。

エースのためにと結束した星稜に、大きな力が生まれた。24年ぶりの4強進出。次の相手は中京学院大中京。最高のムードでぶつかる。【柏原誠】

◆今井秀輔(いまい・しゅうすけ)2002年(平14)4月5日、金沢市生まれ。菊川町小1年から金沢リトルで野球を始め、紫錦台中では金沢シニアでプレー。東海選抜に選出された。昨秋の明治神宮大会からベンチ入り。185センチ、87キロ。右投げ右打ち。