<全国高校野球選手権:智弁和歌山9-2智弁学園>◇29日◇決勝

智弁学園・植垣洸捕手(3年)はハプニングを乗り越え、戦い続けた。

植垣は1回戦の倉敷商戦で死球を受けて途中交代。上顎の骨にひびが入っていた。出場が危ぶまれたが、その後は決勝まで5試合にフル出場。2回戦の横浜戦では痛みを恐れず二塁へ気迫のこもったヘッドスライディングを見せた。

準決勝後、小坂監督は「食事がうまくいっていない部分がある。本来の力を出し切れていない」と心配していた。そして決勝の早朝。植垣は指揮官に誘われ、2人だけで素振りに取り組んだ。「監督に絶対恩返しをしたい」。優勝を届けたかった。2回の内野安打の後は三振、三振。そして8回の公式戦最終打席は左飛だった。9回は小畠の被弾をマスク越しに見つめ、7点差で迎えたその裏は、申し訳なさから攻撃中に泣いていた。それでも「悔しい思いはしたけど、智弁和歌山と甲子園の決勝で試合ができて悔いはないです」。最後は涙はなかった。そう言えるだけの、2年半だった。【三宅ひとみ】