イチローさん、見ててください! 国学院久我山(東京)が1本塁打を含む6安打を放ち、4-2で星稜(石川)に競り勝ち、初の4強入りを決めた。4番下川辺隼人内野手(3年)は、昨年11月に同校を指導したイチロー氏(48=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)から学んだ強いスイングで決勝2ラン。2回戦は3者連続の犠打などバント攻撃で8強入り。準々決勝では一転1発で試合を決め、多彩な攻撃を見せた。休養日をはさみ、30日の準決勝で優勝候補の大阪桐蔭と対戦する。

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初回に手首に死球を受けても一切表情を変えなかった下川辺が、何度もほえた。何度も右手を突き上げた。同点に追いつき、なお2死二塁の5回。カウント3-1から甘く入った直球を力強く、思い切りたたいた。決勝2ランは春夏通じて甲子園通算2500号のメモリアル弾。「甲子園は小さい頃からの憧れ。そこで打てて気持ちよかった。公式戦では一番飛んだかな」。試合前まで今大会7打数1安打。練習では眉間にしわを寄せていた顔が、一瞬にして晴れた。

昨年11月、イチロー氏の打撃練習を目の当たりにして意識が変わった。「全部芯で捉えてました。強い打球を飛ばしていて、すごかった」。打線の軸を担ってきたが、レジェンドのスイングで課題を再認識した。「この冬は強いスイングを手に入れる」。まず取りかかったのは体作りだった。

尾崎直輝監督(31)と両親が「食べ物の好き嫌いが本当に多い」と口をそろえる。中でも苦手なのが生もの。しかし、母美美(よしみ)さん(46)は「最近は嫌いなものも食べるようになりました。本人も自覚があったんだと思います」と変化を感じ取っていた。嫌いなマグロなどの刺し身も、筋肉を育てるタンパク質の宝庫。体を少しでも大きくするために、頑張って口にした。トレーニングも欠かさず、一冬越えて体重は7キロ増の76キロに。バットも全力で振り込んだ。ここぞで成果を示し「打撃練習では1球、1球強いスイングを心掛けてきた。地道に取り組んでよかった。うれしいです」と、うなずいた。

チームトップの高校通算10本塁打。イチロー氏のようなスイングをしたいという思いを胸に、また1つ成長できた。そしてつかんだセンバツ4強。昨夏甲子園では、同じく指導を受けた智弁和歌山が優勝したが「そこはあまり考えずに、1戦1戦勝利を重ねていきたい」。準決勝の相手は超強力打線の大阪桐蔭。臆せず、力強く、振るだけだ。【阿部泰斉】

◆甲子園2500号 国学院久我山・下川辺隼人が放った今大会6号は、甲子園球場での春夏通算2500号となった。甲子園球場以外では45本出ており、センバツでは八事山本球場で12本、夏は豊中5本、鳴尾15本、西宮13本。

◆下川辺隼人(しもかわべ・はやと)2004年(平16)6月10日生まれ。東京都武蔵野市出身。武蔵野四中では小金井シニアで全国大会に出場。好きなプロ野球選手は元阪神・鳥谷敬。181センチ。76キロ。右投げ右打ち。両親と兄。