あのPLを超えた!! 大阪桐蔭が高校野球史に残る猛攻でセンバツ4強を決めた。

84年PL学園(大阪)に並ぶ大会最多タイの1試合6本塁打で市和歌山に圧勝した。6回には伊藤櫂人内野手(3年)がセンバツ史上初となる1イニング2本塁打の活躍。センバツのチーム通算29本塁打に増え、最多だったPL学園の25本を抜いた。西谷浩一監督(52)は甲子園通算59勝目でPL学園の中村順司監督を超えて単独2位に浮上。18年以来4度目の春制覇へ、力強く前進した。

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3月28日は「PL超え記念日」になった。優勝候補筆頭の大阪桐蔭が高校野球史を塗り替えるド迫力の空中戦を演じた。1試合6発。センバツ通算チーム29本塁打を重ね、歴代最多だったPL学園の25本塁打を抜き去った。何度もアーチを架け、西谷監督も「本塁打を打てるチームじゃない。選手も私もビックリ。『甲子園はしっかり引きつけて球をたたけばホームランが入る』と言っている。まさに甲子園のホームラン」と深くうなずいた。

試合前、監督とナインの合言葉があった。「たたいて伸ばせ」。広い甲子園で力みをなくす、おまじないだ。大振りせず、最短距離で強振を。6回に1番伊藤が実践した。米田のカットボールを左中間へ。打者一巡の2打席目は速球をとらえ、左翼フェンスも越えた。センバツ史上初の1イニング2本塁打だった。高校通算10本塁打の1番打者は「自分もビックリ。甲子園で打てると思っていなかった」と声を上ずらせた。

PL学園がマークした84年の1試合最多本塁打記録に並んだ。桑田2発、清原1発…。伝説の常勝軍団と肩を並べた。西谷監督は名将の中村順司監督を抜いて甲子園59勝目。だが、指揮官は「(本塁打は)その時の選手と全然違う。PLをずっと目標にしてきた。中村監督の数字を超えて『勝った』という気持ちはない。もっと勉強して力をつけたい」と気を引き締めた。

西谷監督は98年の指揮官就任後、当初から選手に口酸っぱく言ってきた戒めがある。「どれだけ点差が開いていても、1点差だと思え!」。当時から大阪大会はコールド勝ちが多かったが、全力疾走を怠った主力には雷を落とした。この日は6点リードの6回以降にアーチ4発。心のスキを見せなかった。甲子園初勝利の05年夏の甲子園から17年目の春。勝負に妥協しない姿勢が息づく。野球に情熱を注ぎ、築き上げてきた「伝統」が光った。【酒井俊作】