第94回選抜高校野球大会(甲子園)は30日に甲子園で準決勝が行われる。昨秋の明治神宮大会を制した大阪桐蔭が、優勝候補筆頭の前評判通りの力を見せて4年ぶりの4強に勝ち上がった。大阪桐蔭を止めるのは、老練な多賀章仁監督(62)が率いる近江(滋賀)か。国学院久我山(東京)、浦和学院(埼玉)の関東勢か。PL学園(大阪)・中村順司元監督(75)が見どころを語った。

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大阪桐蔭の西谷監督が、いい顔をして采配を振っている。毎年のように好チームを作るが、今年のチームに際立つのが隙のなさ。前チームが味わった悔しさが今の選手の発奮材料になり、力に変わっている。前チームも、オリックス池田陵真君ら力のある選手を擁したいいチームだった。だが昨春は初戦、夏は2回戦で敗退。先輩が苦しみ、勝てなかった姿を見て、自分たちはもっとやらなくてはいけないと思ったのだろう。その意識が今のチーム力につながる。

星子君はチームの特徴を体現する、いいキャプテンだ。1回戦の鳴門(徳島)戦は、相手エース冨田君の好投で苦戦。それでも2-1の8回に星子君がスクイズで3点目を挙げ、勝ちきった。ここで勝負を決める、という状況で、監督の意図に応えた。

中日の立浪監督がPLの主将だったとき「グラウンドで監督を怒らせるなよ」と話した。監督が大声を出さなくていいようにしろと。監督が思いを主将に伝え、主将が選手に伝える。監督の目になり、代弁者にもなる。さらに、苦境でチームを救う。星子君のスキのなさに、大阪桐蔭の強さを感じる。

大阪桐蔭と準決勝で対戦する国学院久我山は、イチロー氏の指導を受けた。あこがれの人が目の前で実技を行い、新たな知識だけではなく、練習の大切さ、基本の重要性なども教えてもらったと思う。その経験は勝負どころで力になる。3回までどういう戦い方をできるかがカギになる。

浦和学院と近江も楽しみな対戦。近江が勝てば、昨夏の甲子園で大阪桐蔭を止めた山田君がいる。昨秋は右肘痛に苦しんだというが、けん制時にアーム式に投げるときがあり、疲れが出てこないかは気がかり。だが打者に対するときは、昨年の経験が見える好投を続けている。3チームがどう大阪桐蔭に対するかを楽しみに、準決勝以降を見守りたい。(PL学園元監督)