明秀学園日立(茨城)は仙台育英(宮城)に競り負け、夏の甲子園、初出場で目標に掲げていた8強入りは達成できなかった。

2回に先制し、6回まで仙台育英の3投手を打ち崩し4-2とリードした。石川ケニー外野手(3年)が先発するも、4回からはピンチのたび、右打者、左打者に対応し、右翼で先発したエース猪俣駿太投手(3年)とスイッチ。投手と右翼で小刻みに計5回の継投。攻めの守備で何度もピンチをしのいだが、7回裏、ついに力尽き押し出しで2失点。さらに1死満塁から中犠飛。この回、逆転を許した。7回からは、4番手で登板した仙台育英・高橋煌稀投手(2年)を捉えきれず。逆転はかなわなかった。

金沢成奉監督(55)は「投手の継投は監督の感性というものが十分出る。そのまま投げさせて失点して悔いを残すよりは、打つべき手をとって失点した方が大事」と振り返りながらも、「逃げたら負けだと思っていた。でも、自分の想像以上に(選手には)大きなプレッシャーがあったのかと思います」と、石川、猪俣を思いやった。

先発の石川は「自分と猪俣は2人でひとつ」を強調した。「2人ともいつでもいける準備はしていた。何とか抑えてやろうと、最後は気持ちが入りすぎて、ああいう(押し出し四球)になってしまいました」と、肩を落とした。

二刀流・石川の夏が終わった。明秀学園日立に入学すると「投手と野手をやるのが普通」と、二刀流を目指した。昨秋は左肘の疲労骨折で打者に集中した。センバツで投手として復帰すると、今夏は猪俣と2人の継投で茨城大会を勝ち進んだ。この試合も先発すると、力のある真っすぐとキレのあるスライダーで3回まで2安打1失点。5三振と好投。その後は猪俣と小刻みに継投し、3度マウンドに上がった。

4番としても、その存在感を示した。前日、金沢監督から「もっと気楽に伸び伸びと振っていけ」とアドバイスを受けると、2回には先制打に絡む右越え二塁打。3回には2死二塁から右越え適時打で3安打1打点。「打席には力を抜いて入ることができました。絶対にワンチャンスでタイムリーを打つという気持ちで打席に入っていました」と話した。

主将としてもチームをまとめ、春夏連続出場を成し遂げた。「自分は1つ上の代から出してもらっていた。2年の時は自己中心的ですぐに感情的になって自分の結果にしかこだわらない選手でしたが、この3年間で成長させてもらいました。大きな高校野球の人生を送れました」。最後は充実感を手に、高校野球に幕を閉じた。【保坂淑子】