志学館には「ポジティブな神様」がついている。ZOZOマリンスタジアムの右翼席スタンドから、小川颯介選手(3年)が「野球を楽しんで欲しい」と笑顔で声援を送り、5回コールド勝ちへと後押しした。
小川は先天性四肢欠損症により、生まれつき左手首から先がない。昨夏の新チーム結成時、投手から外野手に転向した。グラブを右手につけ、捕球するとステップの際にグラブを外し右手で送球する。右手で腕立て伏せ。ダンベルにヒモをつけ左手にぶら下げ強化。体重も16キロ増の80キロに増やした。貝塚遥樹主将(3年)は「颯介はいつもポジティブ。できることを必死に努力するんです」。今春、計測した筋肉量はチーム1位。春の県大会ではベンチ入りし、千葉商戦では右打席から本塁打も放った。
野球は父賢一郎さん(49)の影響で小3から始めた。「グラブの持ち替えの練習。素振りも毎日500回。これができれば健常者と一緒に野球ができる、とワクワクしました」。
人の倍以上の時間がかかった。小5の時だった。「かあちゃんが俺をこんな手で産まなければよかったのに」と、つい口にしてしまったことがある。「その時の母の悲しそうな顔は今も忘れない。自分も幼かったんですね」。恥ずかしさから「ごめんなさい」の言葉が言えなかった。
いつか野球で結果を残して恩返しをすると覚悟を決めた。中学は千葉県内の強豪、佐倉シニアに入団。木更津市内の祖父母の家に下宿し、志学館で野球を続けた。入学時、久保山政志監督(43)に言われた言葉が忘れられない。「颯介の手は個性だ」。みんなと同じがうれしかった。「この手を言い訳にしないと決めた」。常にポジティブに明るく取り組み、今がある。
小川には夢がある。「障害者野球の日本代表に入って日本を世界一に導きたい」。小川なら、実現してくれるはずだ。【保坂淑子】

