<高校野球東東京大会:城西4-1堀越>◇21日◇5回戦◇大田スタジアム

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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恐怖心に「絶対に自分が捕る」という闘争心が打ち勝った。堀越の中村柊也外野手(3年)は7回1死三塁で、右翼前へのフライに猛ダッシュ。ヘッドスライディングで好捕し、三塁走者のスタートを切らせなかった。「ポテンヒットはなしとチームで決めていました」。試合後、ユニホーム胸部分には人工芝がたくさん付いていた。

右膝には、肌が見えないほどのテーピング。「今まで言えなかったけど、練習中も試合中も時々、痛かったです」と涙をふいた。昨年11月20日の練習試合、中堅手の守備で交錯を避けようと無理な体勢になり、右膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂。右ハムストリングの靱帯(じんたい)を移植する手術を受けた。「これから先、もう野球ができなくなってもいいから、夏に懸けたい」。すぐにリハビリを開始した。スコアの付け方を勉強し、春は記録員でベンチ入り。6月から実戦復帰した。ユニホームのズボンはゆるゆるになったが、リハビリ期間に鍛えた上半身は一回り大きいサイズになった。最後の夏は二刀流で投打で活躍。「勝ちたかったけど…最後まで、みんなで全力でやれてよかったです」。チームのために走る姿は、輝いていた。【保坂恭子】