<全国高校野球選手権:慶応2-0土浦日大>◇21日◇準決勝

慶応(神奈川)が103年ぶりに決勝進出。21日の決勝では107年ぶりの頂点をかけて、仙台育英(宮城)と戦う。

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土浦日大の藤本士生投手(3年)は親友・小森勇凜投手(3年)の思いを背負ってマウンドに立った。3回2死三塁から登板すると自慢のチェンジアップを軸に打たせて取った。0-1で迎えた6回1死三塁のピンチにも、「納得のいく球で」とチェンジアップを選択。右前に運ばれ失点したが「決め球として自信をもって投げてきた球。悔いはない」。自分らしさを貫いた。

いつも藤本の隣には小森がいた。1年時、左肘のケガで1年間のリハビリ生活を余儀なくされた際には小森が支えてくれた。一方今夏、小森が調子を落とすと、キャッチボールをしながら「野球を楽しもう」と声をかけ続けたのが藤本だった。藤本は「日常生活もいつも一緒。機嫌が悪くて。無視されても話し続けました(笑い)」。ラーメン好きが共通で、休みにはそろってラーメン屋へ足を運ぶ。家系ラーメンをすすりながら「甲子園で投げたいな」。2人で夢を語り合った。

3回戦まで伊藤彩を含めた3投手で勝ち上がったが、準々決勝、準決勝は小森の登板はなし。悔しさは藤本が知っている。「小森の分まで」と思いを込め、投げた。試合終了後、2人はベンチ前でキャッチボール。「悔いなく投げられたよ」、「最後まで藤本がマウンドに立ててよかった」。2人が目指した聖地での最後のキャッチボール。涙はなく笑顔だった。【保坂淑子】