慶応(神奈川)が107年ぶり2度目の優勝を果たした。史上7校目の連覇を狙った仙台育英(宮城)と対戦。1回表、1番丸田の先頭打者本塁打などで2点を先制。2回にも丸田の適時打で1点を追加。仙台育英に2、3回に1点ずつを返され1点差に迫られた5回、打者一巡の猛攻で5点を奪い突き放した。

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慶応・森林監督の長男、賢人外野手(3年)は三塁側アルプスからチームメートとともに大きな声援を送った。「ちょっと涙出ちゃいました。いつもありがとう、おめでとうと(声をかけたい)。かっこよかったです」。尊敬する父へ視線を送った。

小学生の頃、父の部屋からは夜遅くまで明かりが漏れていた。チームのこと、練習内容。「体は大丈夫なのかな。お父さん、遊びたくないのかな? すごいなぁ」。父の後ろ姿に、野球への情熱を感じた。「僕も慶応で野球がしたい」。同じユニホームを着る覚悟を決め中学受験に挑んだ。

普段は優しい父に、1度だけこっぴどく怒られたことがある。「中1のとき、物をなくして友達のせいにしてしまったんです」。帰宅後、膝をつき合わせてとことん話し合った。「人に迷惑をかけてはダメだ。賢人にもいいことはないぞ」。父の教えを胸に刻んだ。

「父と一緒に甲子園」は高校の野球部入部を決めたとき目標に掲げた。「立場上、厳しい目で見られるけど覚悟をもて」と父の言葉を胸にプレーした2年半。ベンチ入りはできなかったが「覚悟」を決めアルプスから声でチームを支えた。

幼少期、一緒に高尾山などに登ったのが楽しい思い出。歩きながら野球談議に花を咲かせた。「甲子園が終わったら、また一緒に山登りをしたい」。父と息子に戻り、また頂を目指す。【保坂淑子】