<高校野球山梨大会:山梨学院大付5-4東海大甲府>◇21日◇準々決勝

 高校生NO・1野手の夏が終わった。高橋周平内野手(3年)擁する東海大甲府が、山梨大会準々決勝で山梨学院大付にサヨナラ負けした。高橋は3点を追う8回2死満塁、走者一掃の適時二塁打で同点としたが、あと1歩及ばなかった。今秋ドラフトで複数球団が1位候補に挙げる強打者は涙を見せず、プロ志望を明言した。

 東海大甲府・高橋の目に涙はなかった。「やることはやった。悔いはないんで」。1点を返し、なおも3点ビハインドの8回表2死満塁。最大の好機で外角のカーブをひきつけ、バットの先端で右翼フェンスまで運んだ。走者一掃の二塁打。あと1メートル飛べば逆転の満塁弾だった。冷静な男が塁上で珍しく喜びを爆発させたが、無情にも9回裏、サヨナラの打球が二塁手の右脇を擦り抜けていった。

 4打数1安打。今大会初めて敬遠されなかった。通算70発の本塁打も夏の大会ではゼロだが「大事な場面でヒットが出ればいい。そこで打てるのが主将です」。堂々勝負して、敗れた。

 地元神奈川を離れた、山梨での3年間は誇りだ。常々「自分は練習をやめるとただの凡人。努力の人でありたい」と言ってきた。幼少期から、練習は3度の飯と同じくらい当たり前のものだった。ホームシックになってもケガをしても、絶対に帰らない。毎試合、手作りの甘い卵焼きを持って応援に訪れた母玉寄さん(47)も「褒めてあげたいね。神奈川に連れて帰って、練習の監視しなきゃ」と笑顔で拍手を送った。

 敗れても、高校生NO・1野手の評価は不動。この日もドラフト1位候補に挙げる阪神など5球団のスカウトが視察した。高橋は「目標はずっとプロ野球選手。変わらないです」と、プロ志望届提出の意思を示唆した。追いかけても追いかけても、夢のままだった甲子園。高校野球で大きく成長した「努力の人」は、今度はプロの世界で、新たな夢を探す。【鎌田良美】<日本ハム大渕スカウトディレクターの話>

 積極的に振る姿勢がいい。左投手の変化球にも十分対応している。将来球界を背負える打者として育てていきたい。うちなら右の中田翔、左の高橋ってイメージできるね。<阪神菊地東日本統括スカウトの話>

 他の打者じゃあそこまで飛ばないよ。体が強くて総合力が高い。プロの1軍でクリーンアップを打つようなスイング。内野手っていうのもいいし、甲子園経験がなくても評価がマイナスになることはない。