<高校野球南北海道大会・札幌大谷1-0札幌山の手>◇2日◇札幌地区代表決定戦◇札幌麻生

 札幌地区で創部4年目の札幌大谷が、ついに南北海道大会進出を決めた。札幌山の手を延長10回で振り切り、3季通じて初の道大会切符を獲得。1番立山航(とおる)中堅手が左前適時打を放ち、右のエース木下準(ともに3年)が4安打10三振で完封した。代表決定戦5度目のチャンスをがっちりとものにした。南大会は16日に札幌円山球場で開幕する。

 延長10回裏2死。マウンド上の札幌大谷・木下が、しきりに顔を手でぬぐった。あと1人。先輩が成し得なかった夢がもうすぐ、かなうと思うと、涙をこらえることができなかった。「9回裏からウルウルきてて…。10回は抑えきれなかった」。最後の打者を中飛に打ち取るとナインに駆け寄られ、やっと、心から笑うことができた。

 学校は09年4月の創部前から、野球部強化に乗り出した。道内社会人のサンワード貿易(廃部)などでマネジャーを務めた太田英次氏が監督、現在の五十嵐友次郎監督(40)がフィジカルコーチ、投手コーチにはJR北海道で都市対抗4強に導いた経験がある神田幸輝氏が就任。有望な1期生26人を集めた。上々のスタートを切ったかにみえたが、1年目の目標とした道大会出場は果たせなかった。

 2年目の10年春、初の地区代表決定戦に進出したが、札幌新川に敗退。昨年は春、夏、秋と3季連続代表決定戦までこぎつけたが、ことごとくはね返された。今春、1期生は悔しさを胸に秘めたまま卒業。残された選手には「このままでいいのか」という不安と動揺も広がった。

 五十嵐監督は「社会人と高校生では指導の仕方が違う。プレーの意味、それを動きとしてできるまで何度も教えています」と試行錯誤を繰り返してきた。そして、言った。「高い壁を乗り越えてくれました」。“代決の壁”を5度目で打ち破り、選手とハイタッチを交わして喜び合った。

 昨夏の代表決定戦では、ベンチで悔しさを味わった木下は「自分たちの代で全道に行くと誓い合った。今日は気持ちで投げた」と146球を振り返った。主将の前田庸佑二塁手(3年)は「すごい試合。鳥肌が立った」と興奮は収まらなかった。「自主的に動けるようになってきた。この3試合、僕はあまりサインは出していません」。手塩にかけてきたナインと初めて大舞台に挑む五十嵐監督は、閉会式をうれしそうに見守った。【中尾猛】

 ◆札幌大谷

 1906年(明39)4月、私立北海女学校として創立。48年に中学校を開設し、現校名となった。特進、進学、英数選抜・英数コースと音楽、美術科からなり、全校生徒数は919人(男子284人)。野球部は女子校から男女共学になった09年に創部。現在部員数60人。ほかの運動部では女子バレーボール、フェンシング、水泳などが全国レベル。所在地は札幌市東区北16東9。権平洋美校長。