<高校野球南北海道大会:札幌一6-5札幌日大>◇22日◇決勝◇札幌円山球場

 札幌一が南北海道125校の頂点に駆け上がった。札幌日大に逆転勝ちで、3年ぶり3度目の栄冠を手にした。昨秋準優勝に終わったチームは、新主将についた高石大全(だいぜん)二塁手(3年)を軸に、勝ちにこだわる意識改革とプレーの質の向上を徹底。昨秋決勝で敗れた北照、今春決勝で屈した北海と宿敵を自力で倒し、3季連続の決勝戦で勝利した。8月8日に開幕する甲子園では全国制覇を目指す。

 優勝インタビューを受ける札幌一・菊池雄人監督(40)を見て、高石主将はおえつをもらした。昨秋に主将になった時のこと、春の全道で再び準優勝におわったこと。そんな思いが次から次と頭に浮かび監督の顔を見ることができなかった。ナインを代表したインタビューの最後、気持ちを落ち着かせ「やるからには全国制覇します」と声を響かせると、スタンドからどよめきのような歓声が上がった。

 決勝は、南北海道大会7試合で一番苦しい試合だった。6回を終わって1-4と3点のビハインド。そんな重苦しい空気を振り払ったのが高石だった。7回裏、先頭打者として右前打で出塁。次打者の近沢は「(高石が)出るとチームがイケイケの雰囲気になる」と左前打で続いた。

 無死一、二塁で重盗を仕掛け、その後に2長打などで4得点。一気の逆転だった。菊池監督は「元の高石だったら、前の打席の満塁での凡退を引きずっていた。一番苦しい場面でいい仕事をしてくれました」と逆転の口火を切る一打をたたえた。同点とされた8回裏にも勢いは止まらない。1死二塁から近沢の右翼越え三塁打で勝ち越した。

 昨秋は準優勝に終わり、このままではいけないと感じた菊池監督が、チームを1度白紙に戻した。「高石に懸ける」と監督は信念を持って主将に指名した。昨夏後の新チーム結成時は、調子を落としていて技術的にも伸び悩んでいたため対象から外した。高石は1年春からベンチ入り。これまでの悔しい思いを肌で知り、胸に刻んでいるそんな男に任せた。高石は「僕は言葉もうまくなく、実力もそんなにない。自分がプレーで結果を出すしかない」と心に決めた。

 朝練習ではチームで一番早く、1人でティー打撃をする姿があった。練習では、1つ1つのプレーがきっちりできるまで一切妥協をしなかった。時には心を鬼にして厳しい言葉も吐いた。エースの知久は「野球になると目の色が変わる、1つ1つの言葉に重みがある」と、主将を中心にチームが生まれ変わっていくのを感じた。村田捕手は「野球に対して熱い」と評した。

 「苦しい思いばかりの3年間でしたが、今は最高の3年間。先輩たちの分まで甲子園では札幌一の名前に恥じない戦いをしてきます」。閉会式後、主将はまたナインと抱き合って何度も何度も優勝の味をかみしめた。【中尾猛】◆Vへの足跡◆◇札幌地区大会2回戦8-1札幌月寒3回戦10-0北広島代表決定戦4-1北星学園大付◇南北海道大会1回戦2-0札幌大谷準々決勝6-1北照準決勝5-0北海決勝6-5札幌日大