<高校野球岩手大会:盛岡大付5-3花巻東>◇26日◇決勝◇岩手県営球場

 大谷を打ち崩したぞ!

 盛岡大付が「高校BIG3」の一角、花巻東の大谷翔平投手(3年)を攻略し、4年ぶり7度目の甲子園出場を決めた。3回表1死一、二塁から4番二橋大地三塁手(3年)が左翼ポール際に本塁打を放つなど、好投手から9安打5得点。「打倒・大谷」を合言葉に徹底し続けた打撃練習が夏に実った。

 怪物を攻略した盛岡大付ナインが、マウンド付近で天高く人さし指を突き上げた。三塁走者・大谷がうつむき加減で整列するのを尻目に、雄たけびを上げて喜び合った。「3年間、手の届かない存在だった。自信を持って甲子園に行ける」。関口清治監督(35)は、万感の思いを言葉にした。

 強打で160キロ右腕に襲いかかった。1-0の3回表1死一、二塁。直球を狙っていた二橋は、真ん中高めにきた148キロの絶好球を思い切り引っ張った。「ストレートが速く感じなかった。感触もいい感じだった」。打球が左翼ポール際に突き刺さり、審判が右手を回すのを確認すると大きくガッツポーズ。高校通算39号を怪物に浴びせた。

 神奈川の名門・横浜瀬谷ボーイズでは、中3時に広い保土ケ谷・神奈川新聞スタジアムで本塁打をたたき込んだ。18日の準々決勝・大船渡戦でもアーチをかけた。その試合後、球場の外で父和之さん(45)とすれ違いざまにホームランボールを手渡した。「大事な試合では必ずと言っていいほどホームランを打ってくれた。大谷君から打って甲子園に行ければいい」。決勝で父の願いを形に変えた。

 大舞台で大谷から9安打。150キロ超の速球に、誰もが振り負けなかった。きっかけは昨秋の県大会準々決勝。花巻東に2-5で敗れ、センバツへの道を絶たれた。関口監督は「ずっとつないで勝つ野球をやってきた。でもそれだけでは通用しない」と改革を決心。東北福祉大の先輩で、光星学院(青森)の金沢成奉総監督(45)から打撃フォーム改造の指導を受けた。失敗すれば、取り返しはつかない。「これでダメなら」。覚悟を決め込んだ。

 大谷対策も万全。190センチ近い投手をマウンドから8メートルほど前に立たせて打ち込んだ。気温が氷点下になる真冬には芯を外すと指がしびれて動かない。あかぎれで血だらけになりながらバットを振った選手もいる。準決勝からの6日間もスタイルを貫いた。マシンを最速にし、10メートルほどの距離から打撃。「体感は160キロ。打てるわけがない。でも目を慣らすことはできる」。試合後、ナインは口々に「直球が速いと思わなかった」。効果抜群だった。

 甲子園では春2度を合わせて8戦全敗。関口監督は「大谷君を打てたから甲子園で勝てるはず」と自信を持って聖地に向かう。怪物撃破の勢いそのままに、また1つ新たな歴史を刻む。【湯浅知彦】

 ◆盛岡大付

 1958年(昭33)に生活学園高校として創立の私立校。63年に女子校から男女共学へ。90年から現校名。生徒数は510人(女子213人)。野球部は80年創部、部員84人。過去の甲子園出場は夏6度、春2度。OBに広島の伊東昂大。所在地は盛岡市厨川5の4の1。赤坂昌吉校長。◆Vへの足跡◆2回戦8-1専大北上3回戦12-0軽米4回戦10-0大野準々決勝10-0大船渡準決勝8-1不来方決勝5-3花巻東