<全国高校野球選手権:立正大淞南5-4盛岡大付>◇9日◇1回戦

 またしても、甲子園初勝利はならなかった。4年ぶり出場の盛岡大付(岩手)が、延長12回の末に立正大淞南(島根)に敗れた。春夏通じて9連敗は、甲子園ワースト記録。高校生最速の160キロ右腕、花巻東・大谷翔平(3年)を岩手大会決勝で撃破した強力打線は13安打を放ったが、勝負を決めるあと1本が出なかった。

 ボールを真芯でとらえる高い金属音が聞こえた直後、盛岡大付の夏が終わった。1点を追う延長12回1死二塁。2番望月直也内野手(2年)の鋭いライナーが、二塁手のグラブに収まる。二塁走者の千田新平内野手(3年)が戻れず併殺となり、またしても校歌を聞くことができなかった。春夏通じて9連敗は、45年から58年に松商学園(長野)が記録した8連敗を抜くワースト記録。初出場の95年夏、5番で副将だった関口清治監督(35)は「私自身、ずっとそれに縛られているような感じだった。勝たせてやれなかったのは監督の責任だと思う」と、肩を落とした。

 岩手大会で1試合平均8・83点の強力打線は1回、4番二橋大地内野手(3年)の右中間二塁打で先制点を奪った。だがその後、立正大淞南の左腕、山下真史(3年)を打ちあぐねる。「シュート回転する直球をひっかけてしまった」(二橋)。相手を上回る13安打を放ちながら、7回に追いつかれてからは1度も勝ち越せなかった。

 劣勢でも、信念を貫いた。3-4の8回無死1塁。打席には、それまで3打数無安打の5番八木亮哉外野手(3年)。関口監督は、強攻策を選んだ。遊ゴロ併殺打という最悪の結果となったが「バントと、打たせる選手は決めている。八木は打たせてきた。バントをさせたら、やってきたことの意味がなくなる」と悔いはない。強打の光星学院・金沢成奉総監督(45)に昨秋から指導を仰ぎ、根本から見直した打撃。そして作り上げた攻撃スタイルは、大舞台でも変わらなかった。

 関口監督は今大会、これまで禁止だった宿舎からの外出を部分的に許可した。「自主性のあるけじめ。それができる子たち。練習も本当にうまくなろうとしてやってる」。12イニング、188球を投げきった左腕エース出口心海(3年)は、故郷の神奈川を離れて変わった。中学時代は練習熱心とはいえず、試合では仲間から「あいつが投げたら終わり」とまで言われていた。それが今では、午前5時半起きで走り込むチームの中心的な存在。心身両面で、初勝利に最も近づいた世代だったかもしれない。

 花巻東・大谷を打ち崩すなど、結果を残したのは事実。「特に夏は打たないと勝てない。継続していかないといけない」と関口監督。悔しさと確かな自信を胸にしまい、悲願の初勝利に向けて、再び歩き始める。【今井恵太】