<全国高校野球選手権:光星学院3-0桐光学園>◇20日◇準々決勝

 光星学院(青森)の強打者コンビが、桐光学園(神奈川)の「ドクターK」松井裕樹投手(2年)を攻略した。8回2死一、三塁、3番田村龍弘捕手(3年)が左前へ先制打。4番北條史也内野手(3年)が左中間へ2点二塁打を放ち、3季連続の4強入りを引き寄せた。

 いつもは高く上がる左足が、地面をはっていた。8回2死一、三塁。田村は、松井を打ち砕くために「すり足打法」を選んだ。1ストライクからの2球目。140キロの内角直球はボール気味だったが「エンドランの感覚で。体を開いて打った」と、詰まりながらも左前へ運び、スコアボードに待望の「1」が刻まれた。

 「すり足」は、よりタイミングを取りやすくするためにとった勝負手だった。「ここは俺しかおらんと(自分に)プレッシャーをかけた。自分が決めるしかない」。第1打席では「見たこともないスライダー」で、青森大会を通じ今夏9試合目にして初の三振を喫した。第2、3打席は「真っすぐ狙いで浮気しないように」とヤマを張っていたが、直球の威力に押し込まれて打ち取られた。3打席の凡打から講じた主将の策が、チームを3季連続の4強入りに導いた。

 センバツ後、石藤寛之トレーナー(30)から言われた。「(OBの巨人)坂本は、春から夏にホームランを19本打って39本。40から50はいけるな」。しかし、この時の30本から数字が伸びない。石藤トレーナーが心配しても「絶好調っすよ」と威勢の良い声が返ってくる。青森大会で打率4割6分2厘と打ちまくった田村。3回戦で36号を放った時も「本当は打ちたいと思っていた」と思わず本音がこぼれた。1発よりも、仲間と1日でも長く野球をする-悲願の初優勝のためチーム打撃に徹する。その姿勢は一貫している。この日の先制打も「甲子園で打ったホームランよりうれしい」と表現した。

 4番北條も「田村が直球だったので、変化球がくる」と続き、外角のスライダーを左中間へ。今夏初めてバットを短く持ち、走者2人をかえした。15三振を喫しながら、役者2人の活躍で、ドクターKを撃破。東北勢初の優勝へあと2つと迫った。【今井恵太】