<高校野球広島大会:新庄4-1盈進>◇24日◇準々決勝◇マツダスタジアム

 新庄が、プロ注目左腕のエース田口麗斗(かずと)投手(3年)が13三振を奪う4安打1失点の今大会初完投で、2年連続の4強入りを決めた。盈進に4-1と快勝。田口は自己最速の147キロをマークし、打っても4打数4安打の大暴れ。初の甲子園へ投打でけん引する。

 田口が舞った。50球目だ。4回2死から原田晃樹内野手(3年)への外角低めへの直球は、自己最速の147キロが表示され、マツダスタジアムがどよめいた。2球続けて、147キロを投じると右飛に打ち取った。

 「球速は気にしていないですが、今日はキレているなとは思いました」

 初回は「3年生にもマツダが初めての選手もいたので、引っ張って行こうとした」という思いが空回りし、先頭に四球を与えるなど先制を許した。だが、2回以降は立ち直り、終わってみれば4安打1失点で、今大会初完投を果たした。

 代名詞の三振も、7回以外は全イニングで奪い13個を積み重ねた。4試合合計で、31回48奪三振は驚異の奪三振率13・94を誇る。桐光学園・松井と比較される左腕を目当てに、ネット裏には巨人がスカウト5人態勢で視察に訪れるなど、プロ7球団のスカウトが集結し、熱視線を送った。巨人山下哲治スカウト部長は「5人で見に来た価値があった」と賛辞を贈った。

 高校進学時、数ある名門校の誘いを受けながら、新庄を選んだ決め手は甲子園の出場経験がなかったことだ。「自分の力で出たいんです」。憧れの投手も「自分がそうなりたい」と我流を貫く。だが、中学2年になるとき、テレビを見て心を打たれた選手がいた。清峰3年のセンバツで優勝した広島今村だった。

 「感情を表に出さずに、冷静に投げる姿は理想。でも、僕にポーカーフェースは似合わないんです」

 チーム内では自称「いじられ役」だ。相部屋の2年生山岡就也投手には「先に寝ます」と言われるなど、後輩にも気を使わせない。それどころか、朝は田口の方が声をかけて起こしてあげるという。マウンドでは絶対的な力を誇示するが、グラウンドを離れれば、心優しきムードメーカーだ。

 だが、野球のことになれば表情は一変する。夢だった甲子園出場も、一戦ずつ現実味を増してきた。

 「(松井と)対戦してみたい。甲子園に出て、日本一になりたいです」

 170センチの小さなエースの目標は壮大だ。【鎌田真一郎】

 ◆田口麗斗(たぐち・かずと)1995年(平7)9月14日、広島県生まれ。小学3年から五日市観音少年野球クラブで野球を始め、五日市観音シニアではエースで県大会出場。新庄では1年夏からベンチ入り。憧れの選手は「自分が尊敬される選手になりたい」。最速147キロで、球種はカーブ、スライダー。家族は両親と妹。170センチ、73キロ。左投げ左打ち。