<第95回高校野球選手権大会:甲子園練習>◇4日

 第95回全国高校野球選手権記念大会(8日開幕)に初出場する弘前学院聖愛(青森)が、甲子園練習を行った。佐藤翔平外野手(1年)は青森大会では応援組だったが、背番号18でメンバー入り。青森山田3年の兄和哉は、7月の青森大会中、刃物を持った男に襲われた女性を助けた勇気ある球児。弟は持ち味の元気でチームを助けるつもりだ。今日5日には組み合わせ抽選会が行われる。

 勇気あふれる球児の弟は、チームきっての元気印だった。春夏通じて初出場の弘前学院聖愛。ガチガチに緊張した上級生を、甲高い声が絶え間なくもり立てる。その主は1年生の佐藤。青森大会は右肩痛もあってベンチ外だったが、原田一範監督(35)は「『1人一芸』。佐藤は3年生より元気があるし、意欲もある」と背番号18を与えた。外野と捕手で守備練習を行った佐藤は「小さい頃からの夢。自分には元気しかない」と声を張り上げ続けた。

 青森大会中に勇気をもらう出来事があった。先月16日、青森市営野球場近くの駐車場で、男が60代の女性を刃物で切りつける事件が発生。緊迫した状況にもかかわらず、大会補助員をしていた青森山田3年の兄和哉が男に体当たりし、押さえつけた。

 別会場にいた佐藤は、父昭義さん(48)から「和哉が人を助けた」と聞かされたが、冗談だと思っていた。しかし、帰り道で携帯電話のワンセグを見ているとニュース番組に兄が映っている。「小さい時から野球をしてきて兄が目標だったけど、その目標が人間的な部分で大きくなった」と驚くしかなかった。

 青森大会準決勝では兄のいる青森山田を破った。「お前にはまだ甲子園はもったいない」と言われたが、聖愛への進学を勧めてくれたのは兄だった。「山田に行きたかったけど『聖愛の方がお前には合うよ』と言ってくれて。実際、自分には合っていた」。大阪入り前、警察官を志す兄に採用試験の問題集を手渡した。兄は勇気で、弟は元気で-。人のため、そしてチームのために、全力を尽くす。【今井恵太】

 ◆佐藤翔平(さとう・しょうへい)1997年(平9)4月27日、青森県平川市生まれ。小3の時、竹館小の野球部とひらかベースボールクラブで同時に野球を始める。平賀東中野球部2年時には東北大会で優勝し、全国大会16強。右投げ左打ち。172センチ、80キロ。家族は両親、祖母、兄、姉。

 ◆事件VTR

 7月16日の午前8時半ごろ、青森大会が行われていた青森市営野球場近くの駐車場で、70代の男が60代の女性に刃物で切り付ける事件が発生。男は女性に馬乗りになってさらに切りかかろうとしたが、大会補助員の青森山田野球部・佐藤和哉君が男に体当たり。転倒した男の両腕を締め上げて押さえつけ、青森署員に引き渡した。女性は首や手首にけがをしたものの軽傷。後日、佐藤君には青森県警から感謝状が贈られた。