<高校野球埼玉大会:所沢商14-4児玉>◇12日◇2回戦◇上尾市民

 左右両投げ球児の所沢商・増田一樹投手(3年)は、児玉戦に先発し、左投手として5回4失点だった。

 埼玉大会に初めて現れた「二投流」の所沢商・増田は無言のまま、バスに乗り込んだ。児玉戦の5回、2死後に一気に乱れた。4連打を浴びて4失点。大量援護もあって勝利は挙げたものの、試合前に「プレッシャーはないです。左で先発します」と明るく話した表情はどこにもなかった。

 皮肉にも失点した直後、上尾市民球場のスタンドが一番沸いた。ベンチに戻ると、右投げでキャッチボールを始めたからだった。もっとも向かった先は左翼だった。福地利彦監督(54)は「右も投げられますが、脳は1つですから。今日は右でいってもうまくいかないでしょう」と話した。

 同監督によれば「5、6月でこんなことは初めて」という。被安打10の4失点。「本人のあずかり知らないところで注目されて、プレッシャーもある。初めての夏の、それも初戦ですから」と原因を探った。それでも打席では、3安打2打点とし、マウンドの乱れを懸命にカバーした。

 応援席では、母紀子さん(44)が声援を送った。右肘を故障した増田に左投げを勧めた人だ。「ケガしても反対の手で投げたという話を聞いたことがあって、やってみればと。まさかまたマウンドに立てるとは思いませんでした」。奮闘する愛息の姿をしっかりと見守っていた。【米谷輝昭】