<高校野球石川大会:星稜9-8小松大谷>◇27日◇決勝◇石川県立

 星稜が9回裏に8点差を逆転する、まさかの大逆転サヨナラ劇で、2年連続17度目の甲子園出場を決めた。星稜は9回表終了時点で0-8と小松大谷に大量リードを許したが、岩下大輝投手(3年)の左翼席場外への2ランなどで追い付き、5番佐竹海音捕手(2年)が左越えサヨナラ打。元ヤンキース松井秀喜氏(40)、サッカーACミラン本田圭佑(28)らの後輩たちが、どこよりも熱い勝利で甲子園に乗り込む。

 誰もが信じられない結末に、真夏の石川県立野球場が沸いた。8点差を追い付き、なお9回裏2死一、三塁。5番佐竹が1ストライクからの2球目、外角高めに入ったカーブを振り抜く。左翼手の頭上を高々と越えて、打球はフェンスまで転々と転がった。

 奇跡的な逆転サヨナラ劇に、ベンチから選手が飛び出し、抱き合って、泣いた。小松大谷ナインは、ぼうぜんと立ち尽くして、整列に加われない。林和成監督(39)は「まだ実感が湧かない」と興奮した。

 0-8で迎えた9回裏。決勝でなければ、7点差で終了する7回コールドで、すでに試合は終わっていた。一塁側スタンドにもあきらめムードが漂う中、大逆転劇が始まった。四球、適時三塁打で1点を返すと、さらに右前適時打で2-8。6番梁瀬彪慶内野手(2年)が2点左前適時打を放ち4-8まで追い上げた。

 球場のボルテージが上がる中、無死一塁でドラフト候補のエース岩下が打席に立った。9回から再登板し、3者連続三振で流れを引き寄せていた。2球目。吸い込まれるように甘く入ったカーブをすくい上げる。左翼席場外に消える2ランに、一塁側アルプスに右手を突き上げて、ベース1周を決めた。さらに2死一、二塁と攻め、4番村上千馬内野手(3年)の中前適時打でついに同点に追い付いた。相手失策はなく、打者13人で8安打を放ち、9点を奪う猛攻だった。

 星稜は79年夏に箕島と延長18回を戦う名勝負を演じ、敗れたものの日本中の話題となった。92年夏には、元ヤンキース松井氏が明徳義塾戦で5打席連続敬遠され、やはり注目された。今回は、甲子園出場を懸けた試合で、再び記憶に残る、大逆転サヨナラ劇を決めた。村中健哉主将(3年)は「日本一を目標にやっているので、甲子園で校歌を1回でも多く歌えるように頑張りたい」と言った。これ以上ない勢いをつけ、2年連続の聖地に乗り込む。

 ◆星稜

 1962年(昭37)「実践第二高等学校」として創立された私立校。63年から現校名。生徒数は1706人(女子786人)。野球部は62年創部で、部員数は64人。甲子園出場は春11回、夏は今回で17回目。所在地は金沢市小坂町南206。干場久男校長。◆Vへの足跡◆2回戦6-0野々市明倫3回戦10-1石川工準々決勝7-2飯田準決勝6-1金沢工決勝9-8小松大谷