<高校野球西東京大会:日大鶴ケ丘2-1東海大菅生>◇28日◇決勝◇神宮

 日大鶴ケ丘が、6年ぶり3度目の甲子園を決めた。

 劇的に夢舞台への切符をつかんだ。9回2死一、二塁。日大鶴ケ丘の中里雅哉外野手(3年)が「自分が決めてやろう」と振った打球が三遊間を抜けた。二塁から代走の五十嵐靖晃外野手(3年)が快足を飛ばし本塁へ滑り込んだ。甲子園を決めるサヨナラ勝ち。中里は「ただただ本当にうれしい」と声を弾ませた。

 大改造が実った。春は西東京勢では最高の4強。だが「勝ったのが不思議なチーム。競争意識を高めよう」と萩生田博美監督(41)。春からメンバーを6人入れ替えた。夏はその新戦力が見事に期待に応えた。

 サヨナラを演出した二塁走者、五十嵐もその1人だ。代走のスペシャリストとして夏に初ベンチで、この試合が初出場だった。

 サヨナラの場面。外野は前進守備で打球も鋭く、タイミングは完全にアウトだった。だが「迷いはなかった」。すぐにトップスピードにギアを入れ三塁も速度を落とさず蹴り生還した。

 春メンバーを外れ自問した。「背番号をもらうためにできることはなんだ」。導いた結論が代走を極めるだった。打撃練習中も、打撃は早めに切り上げ、ランナーに入り、打球判断を培った。交代の制限がない練習試合では1試合に3度代走で出場もした。磨いた足で、大仕事を成し遂げた。

 先発し7回1失点の小林晃大投手(3年)も夏初めてのメンバー入り。この夏は2試合連続完投を含む、6試合中5試合で先発。萩生田監督も「彼がいないと夏は勝てなかった」。一般入試組の背番号11は紛れもなく投手陣の柱だった。

 チーム一丸で、08年は果たせなかった甲子園夏1勝を目指す。春はメンバーも、夏はスタンドで応援する古川真啓内野手(3年)はいう。「複雑な思いもあったが、新しいメンバーが活躍するのはうれしい」。春は4番捕手ながら、夏は背番号7で、控えに回った金井浩太朗主将(3年)は「自分たちの野球は間違ってなかった」。部員109人が起爆剤となりあってつかんだ甲子園。ニューヒーローが出るチームは夏強い。【上田悠太】

 ◆日大鶴ケ丘

 1951年(昭26)創立の私立校。生徒数は1366人(女子766人)。野球部は55年創部で部員は109人。主なOBはタレント岩城滉一、漫画家の故杉浦日向子さんら。甲子園出場は春はなく、夏は3度目。所在地は杉並区和泉2の26の12。村松記久明校長。◆Vへの足跡◆3回戦6-2日大二4回戦6-0東大和5回戦13-3多摩大聖ケ丘準々決勝7-1小平準決勝10-3国学院久我山決勝2-1東海大菅生