<高校野球愛媛大会:小松10-1松山東>◇29日◇決勝◇松山中央公園

 小松が創部以来、春夏通じて初めての甲子園出場を決めた。古豪・松山東を相手に強力打線で圧勝した。川之江、今治西で甲子園6度の出場経験を持つ、宇佐美秀文監督(56)が、就任5年目でチームを甲子園に導いた。大会を通じて登録20人全員を起用する全員野球で激戦の愛媛をノーシードから勝ち上がった。

 高々と上がったファウルボールを、途中出場の主将、日野文斗一塁手(3年)がフェンス際でつかんだ。小松ナインが初出場の雄たけびを上げた。「投手が頑張ってくれてたんで、ぶつかってでも取ってやる」と、気迫のプレーを自画自賛した。

 宇佐美監督が目指す、全員野球を証明した。エースナンバーを背負う左腕日野は故障で万全ではなく、今は主将に徹し、今大会登録20人全員が出場する「小松野球」を引っ張っている。全国経験豊富な指揮官も日野の話になると「卒業生が見守る中、彼の頑張る姿を見せられ何より」と目頭を押さえた。

 03年に今治西を率いて出場して以来、名将は甲子園から遠ざかっている。05年には1度、監督業を離れた。小松に赴任した10年に現場復帰し、今年で5年目。ドラフト1位候補の安楽智大投手(3年)を擁する済美を想定した打撃練習が奏功した。157キロの直球、135キロのスライダー、120キロのカーブ…。打ち負かす自信をもたせるため、冬場の4カ月間、徹底的にマシンを打ち込ませた。

 5回の同点打、7回の適時打を含む3安打の4番大上拓真捕手(2年)は「練習の成果です」と胸を張った。序盤は第1シード今治西を相手に完封勝ちした松山東のエース亀岡優樹(2年)に苦しんだが、終わってみれば11安打を放ち、10得点の圧勝だった。

 実は指揮官には亀岡優のデータがほとんどなかった。初回の投球をみて想像以上のキレにファーストストライクを捨てさせた。「100球を超えてからが勝負」。ブランクを経ても勝負勘は衰えてはいなかった。もちろん選手への愛情も、だ。個人に特性を生かした役割を与え、起用した。

 7回先頭の7番寺岡優斗外野手(3年)が右越え三塁打を放つと、迷わず石川大和外野手(3年)を代走に送った。「監督に試合前から言われてましたから」と、石川は浅い右飛からタッチアップで生還。2-1と逆転した後の「次の1点」を的確な采配でもぎ取った。

 全員野球。文字通りの野球で頂点に導いた。最後に宇佐美監督は「また甲子園に出られるのは本当にうれしい。まずは初戦突破。(甲子園は)9勝なんで、選手らに10勝目をねだります」とナインに向かってほほ笑んだ。

 ◆小松

 1907年(明40)に小松町立実用女学校として創立した県立校。49年に現校名に。生徒数は461人(女子285人)。野球部は47年創部で、部員数は61人。甲子園は初出場。主なOBは歌手の秋川雅史。所在地は西条市小松町新屋敷乙42の1。山田里美校長。◆Vへの足跡◆1回戦11-0小田2回戦11-1川之江3回戦7-6帝京五準々決勝8-4新居浜商準決勝9-2西条決勝10-1松山東