<全国高校野球選手権:東邦11-3日南学園>◇12日◇1回戦

 「バンビ2世」こと、東邦(愛知)の1年生、藤嶋健人投手が、甲子園初先発で8回3失点で白星デビューを飾った。2回1死満塁のピンチを切り抜けるなど、1年生とは思えない堂々とした投球を見せた。1977年(昭52)夏準V時の1年生・坂本佳一投手のように、さわやかな風を甲子園に運んだ。

 「バンビ2世」が堂々の全国デビューだ。東邦の1年生・藤嶋が8回9安打3失点。初の甲子園という大舞台で初勝利を収めた。

 初回に先制し、2回に1死満塁の大ピンチを招いたが、動じなかった。「まだ2回。何も怖がらず思い切り行け」と伝令から伝えられギアチェンジした。次の打者に、この日最速の142キロでつまらせて三ゴロに仕留めると、続く打者を三振。「よっしゃー」と大きな雄たけびを上げ、ベンチに戻った。

 藤嶋

 球場に入った瞬間からずっとわくわくしていた。プレッシャーもそんなにない。気迫を出して投げられた。

 物おじしない度胸と強気な投球は誰もが認めるところだ。森田泰弘監督(55)は「ここぞという時に力を出せる、踏ん張れる強さがある」と1年生らしからぬ力強さに信頼を置く。

 マウンドでの雄々しい姿から想像できないほど、ユニホームを脱げば初々しい1年生だ。「監督からはアンパンマンと呼ばれて、クラスでは、せんとくんと呼ばれます」と無邪気に答える。峰捕手は「天然で、まだ中学生みたいです」。寮では嫌いなホラー映画を見て大騒ぎする。この日の試合後も、ユニホームのボタンを掛け違えていたり「天然だけどすごくかわいい」(峰)。周囲から愛されるキャラクターだ。

 試合中も上級生に見守られている。この日もグラウンド整備の時「リラックス、リラックス」と声をかけられた。藤嶋は「先輩たちはいつも気遣って、引っ張ってくれる。先輩たちのおかげで勝てました」。周囲の支えを常に感じている。

 過去に1年生投手で勝利を収めたのは元祖「バンビ」の坂本佳一氏や、桑田真澄氏(元巨人)ら。「(甲子園は)テレビで見るのとは一味違う。1年目から目指そうと思っていた」。デビュー戦から生き生きとした姿を見せて白星を運んだ「バンビ2世」。ニューヒーロー誕生を予感させる83球だった。【磯綾乃】

 ◆藤嶋健人(ふじしま・けんと)1998年(平10)5月8日、愛知・豊橋市生まれ。小学2年から「栄ドリームズ」で投手として野球を始め、中学は「東三河ボーイズ」に所属。中学3年時には「ジュニアオールジャパン」に選ばれ米国遠征。東邦では1年春からベンチ入り。直球は最速144キロ、スライダー、カーブ、ナックルも投げる。家族は両親と兄。50メートル走6秒8。遠投100メートル。176センチ、75キロ。右投げ右打ち。

 ◆バンビ

 77年夏の甲子園で準優勝した東邦の1年生エース、坂本佳一投手の愛称。1年生ながら背番号1をつけ、スリムな体形でけなげにマウンドを守り続ける姿が人気を呼んだ。初戦(2回戦)の高松商(香川)戦から決勝の東洋大姫路(兵庫)戦まで5試合を1人で投げ抜き、決勝では1-1の延長10回裏にサヨナラ本塁打を浴びた。2年生以降の甲子園はなし。卒業後は法大-日本鋼管でプレー。現在は岡谷鋼機に勤務。