<全国高校野球選手権:三重5-4広陵>◇13日◇1回戦

 激闘を制することはできなかった。広陵(広島)が三重に延長11回、押し出し四球でサヨナラ負けした。エース吉川雄大投手(3年)は、169球を投げきる力投を見せたが、三重の粘りに力尽きた。広島県勢春夏通算200勝、広陵夏30勝を目前に、初戦で夏が終わった。

 1勝が遠かった。県勢春夏通算甲子園200勝、広陵夏30勝に王手をかけていたが届かなかった。

 流れはつかんでいた。2回表に広兼の左適時打で先制。2点リードの4回裏に同点とされるも、再び勝ち越した。しかし、土壇場で追いつかれ延長戦へ。2時間58分の激闘は、押し出し四球で幕切れした。エース吉川は「みんなに申し訳ない」と繰り返した。

 最初に流れを持ち込んだのは、力投を続けたエースだった。7回表、カウント1-1からの3球目、無心で振り抜いた打球は左翼スタンドへ吸い込まれた。野球人生初の本塁打は、選手権大会甲子園通算1400号のメモリアルアーチとなった。

 しかし、9回裏2死満塁。三重の2番佐田の2点適時打で追いつかれ、試合は延長戦へ。11回裏の2死満塁。重圧が再び吉川を襲う。カウントが3ボールとなり、捕手太田が吉川に駆け寄った。「思いっきり真ん中に投げてこい」。カウント3-1から、太田目掛けて投げたこん身のストレートは、ストライクゾーンから大きく外れた。

 「最後の最後でストライクを投げられないのは、力不足。終わった瞬間は頭が真っ白になった。負けた実感が湧いてこない。仲間に申し訳ない」

 ナインもさまざまな思いを背負っていた。先制打を放った広兼は、1度挫折を味わっていた。三原中央リトルシニアで、日本代表の投手兼4番として、世界大会に出場するなど華々しい経歴を持ち、この大会で、最優秀投手を受賞した。しかし、広陵に進学し、初の聖地となった昨春のセンバツ直前で、左足首を骨折。メンバーから外れた。「あのときは、悔しかった。でも(スタンドで応援して)いい経験になった」。悔しさをバネに放った一打だった。

 3年を共にした仲間と監督に1勝をささげたい。エースの思いはかなわなかったが、169球を投げきった1番の背中は、一回りも二回りも大きく映ったはずだ。【小杉舞】