<全国高校野球選手権:沖縄尚学6-5二松学舎大付>◇20日◇3回戦

 「琉球のライアン」沖縄尚学・山城大智投手(3年)が、13安打5失点と苦しみながらも、サヨナラ勝ちで同校夏初の8強に導いた。9回10奪三振で完投すると、安里健内野手(3年)がサヨナラ二塁打を放ち、二松学舎大付(東東京)に競り勝った。

 安里の打球が左中間を深々と破り沖縄尚学のサヨナラ勝ちが決まると、山城は笑顔でベンチを飛び出した。「『お前が決めろ』と安里を送り出した。ちょっとだけ期待してました」。

 サヨナラを呼び込んだのは、9回の山城の投球だった。同点の2死二塁。相手はこの日三塁打を含む2安打2打点を許した秦。内野が集まり敬遠策も出たが、決定権を任された山城は勝負を選んだ。すべて直球で3球三振。最後は外角を狙った140キロが真ん中に入ったが空振りを奪った。比嘉公也監督(33)は「勝負するんだろうなと思いました。すごく気持ち入っていた」と右腕の気持ちの強さをほめた。

 17日の初戦・作新学院戦とはほど遠い内容だった。13安打を浴びた。4回までに5失点。6回まで毎回先頭打者を出塁させたが「クイックの方が今日はよかった。足を上げるだけが自分ではない」と粘った。6回から緩いカーブを交ぜることで、前かがみで右肘が下がっていたフォームも修正して見せた。

 終盤でも球速は落ちない。今帰仁中時代はトルネード投法で体をいっぱい使って投げていた。外部コーチとして指導していた父智さん(52)は「ダルビッシュ(レンジャーズ)のように体幹を鍛えれば何球投げても崩れないと教えてきました。ほとんど完投してましたよ」と話す。

 ライアンが大きな柱に成長した今年の夏、県大会前に比嘉監督がナインに「全国制覇を目指そう」とはっきり口にした。普段は慎重な監督が、それだけ手応えを感じている証しだった。苦しい接戦を勝ち抜き、沖縄尚学初の夏2勝、初の8強と歴史をつくった。試合後、お立ち台に立つと勘違いした山城はサヨナラ男の安里について行った。「でしゃばりました。スミマセン」と笑って引き返してきた。準々決勝でまた快投し、堂々とお立ち台に上がる。【石橋隆雄】