<全国高校野球選手権:三重5-0日本文理>◇24日◇準決勝

 日本文理(新潟)の14年夏が終わった。準決勝で三重(三重)に敗れ、準優勝した09年以来の決勝進出はならなかった。エース飯塚悟史投手(3年)が初回に先制点を許し、8回には今春の北信越大会2回戦(対富山国際大付)以来となる公式戦本塁打を浴び、10安打5失点で力尽きた。4番池田貴将主将(3年)が初回先制機で併殺に倒れるなど、強力打線も5安打無得点と沈黙した。大井道夫監督(72)は新チーム作りの課題として、複数投手制の必要性を示した。

 「文理劇場」にふさわしくない幕切れで終戦を迎えた。強打で鳴らす日本文理が、まさかの完封負け。三重のエース左腕・今井の前にわずか5安打に抑え込まれた。大井監督も「無得点というのは、このチームになってから記憶にない」と、今春センバツの豊川戦以来となる公式戦黒星を残念がった。

 看板打線が機能しなかった。初回1死一、二塁。先制のチャンスで池田主将が併殺に倒れた。1点を追う3回も2死一、三塁の好機で、またも池田が低めのスライダーをひっかけ遊ゴロに終わり、流れを変えられなかった。大井監督は「(今井が)想像以上に良くて、低めをうまく打たされた。うちは軟投派に弱い」と、相手左腕の投球術に舌を巻いた。

 昨秋の明治神宮大会でバックスクリーン弾を放ったエース飯塚は、今大会では9番に固定された。「本当はクリーンアップを打ちたい気持ちはありますが、チームが勝つため」と、ピッチングに専念。1人で5試合連続完投、650球を投げ抜いたが、決勝戦には届かなかった。3回戦の富山商戦で史上5人目のサヨナラ逆転2ランを放った「ラッキーボーイ」の新井は、1つ打順を上げて5番に起用されたが、無安打に封じられた。

 敗戦の中に、好材料もあった。2年生の星はこの日も2安打と気を吐き、5試合通じて先頭打者でフル出場。5割の高打率を残した。池田は「優勝旗を新潟に持って帰りたかったですが、今度は星を中心にして、また甲子園に戻ってきてほしい」と、経験値を上げた新たな“スター”に期待し、バトンを渡した。

 大井監督も当然、これからも甲子園優勝という悲願を追い続ける。「中学生で大井に指導を受けたいと思う子がいれば、まだやっていきたいと思う」と、“生涯現役”を宣言。「飯塚はよく投げた。でも、戦いを通してピッチャーが1人だと、やはりきついと思った。2、3人はほしいね」。全幅の信頼を置いたエースをたたえながら、4強進出をスタンドから見届けた下級生に夢を託した。【和田美保】