<高校野球南北海道大会:北照2-0函館大有斗>◇14日◇1回戦

 北照の左腕エース阿世賀亮(3年)が、函館大有斗を相手に「準完全試合」を達成した。許した走者が内野安打の1人だけという、2-0での完封劇。昨秋の駒大岩見沢との道大会決勝はサヨナラ被弾に泣き、今春はチームの不祥事で大会出場を辞退した悲運の主将。無念の涙を乗り越え、目指す甲子園まであと3勝とした。

 もう無念の涙は、流さない。阿世賀の思いの強さが生んだ「準完全」だった。抜群の制球でストライクを先行させ、自慢の縦のカーブで凡打の山を築いた。許した走者は3回の内野安打の1人だけ。80球、わずか1時間23分の試合時間に、甲子園への熱い気持ちを凝縮させた。

 そんなエースに、待望の先取点をプレゼントしたのが俊足の原田だった。0-0で迎えた6回。1死二、三塁から水崎が浅めの左邪飛を上げた。突っ込めるかどうか微妙だったが、足に自信のある原田は「行ける」と読んで果敢にタッチアップ。同校「生徒会長」の判断は正しかった。7回には小本、西田の下級生たちが長打で2点目をもぎ取った。

 地区予選では制球が定まらず苦戦が続いた。それを修正すべく、10球続けて同じ場所に決まらないと、投球をやめないという練習に取り組んできた。「なかなか決まらず、150球になったこともありました」。特訓が、この日の快投につながった。

 昨秋の全道大会決勝では駒大岩見沢に延長10回、サヨナラ本塁打で敗れた。飛躍を期し、厳しいトレーニングのオフに突入した。だが部内で同級生部員の生活態度をいさめる行為が行き過ぎ、集団暴力事件へと発展。春は地区予選から出場を辞退、練習試合もできなくなった。

 3年生たちは何度も自分たちだけでミーティングを開き、出直しに努めた。常にその中心にいたのが主将の阿世賀だった。河上敬也監督(49)は「不祥事はあったが、決して乱暴な子らではない。つらい期間をこらえ再出発を期している姿を見ると、何とかしてやりたいと思った」という。

 阿世賀は「秋の負け方、春の出られなかった期間。いろいろあって本当に悔しかった。でも精神的には成長できたと思う。(上で)駒大苫小牧と当たったら、先輩たちの分まで気持ちをぶつけたい」。167センチの小さなエースがグイと胸を張った。【本郷昌幸】