<高校野球福岡大会>◇19日◇5回戦

 プロ注目の九州国際大付の4番榎本葵(3年)にこの夏1号が飛び出した。8回1死で右翼スタンドに放り込んだソロは高校通算47号。3安打3打点の活躍に加え、先発投手として高校初の夏のマウンドを踏み3回を1安打無失点に抑えた。チームは稲築志耕館を7-5で破り3年連続8強進出した。

 頼れる4番に「目覚めの1発」が飛び出した。2点リードで迎えた8回1死、榎本の打球は右翼スタンドへ飛び込んだ。待望のこの夏1号は高校通算47号。さらに9回2死一、二塁で右翼へ二塁打を放ち、2点を追加。終盤追い上げられたため、結局この2点が決勝点となった。3回戦までなかなか勝負してもらえず、2試合で3安打に終わっていただけに「9回に打てたのが一番良かった。本塁打も甘い球を逃さず打てました」と納得顔だ。

 先発投手の役割も果たした。1年から4番に座るが、夏の登板は高校初。3回を投げ1安打無失点の結果にも「1四球がなければ良かったんですけど」とこちらは不満顔。それでも若生正弘監督(59)は「どのくらい投げられるか見たかった。これからも投げる機会はあると思うよ」と「投手榎本」に合格点を与えた。

 「今まで育てた中で打撃センスは1番。投手で言うならダルビッシュ級」と若生監督もほれ込む好素材。ヤクルト、中日のスカウトがネット裏を訪れ「どの方向にも打てるし、センスは抜群」(中日渡辺スカウト)とプロの評価も高いが、昨秋は調子を落とした。上級生になり主将の気負いが打撃に出て、好機に安打が出なかった。主将の重責に縛られず、自分の打撃も大事に出来るよう気持ちを切り替えられた今は、軽くバットを握り、リラックスして打席に立つ。

 準々決勝の飯塚戦が2年連続甲子園へのヤマ場。「当たり前のことをしっかりやりたい」。榎本のバットが火を吹けば、甲子園は近くなる。【前田泰子】