<高校野球南北海道大会>◇26日◇決勝

 決めた!

 夏19年ぶり!

 春夏連続甲子園だ。センバツ甲子園8強の北照が、函館大有斗を4-3で下し、北海道勢史上9校目の春夏連続甲子園出場を決めた。エースで4番又野知弥投手(3年)が、今夏4本目のアーチとなる先制弾&完投勝利でチームをけん引。主将の西田明央捕手(3年)との最強バッテリーを中心に130校の頂点に立った。91年夏以来、19年ぶり2度目の夢舞台では、夏甲子園初勝利、さらにセンバツ超えを目指す。

 満身創痍(そうい)の主役たちが、互いにちゅうちょした。勝利の瞬間、両手を天に突き上げた北照のエース又野。駆け寄る捕手西田。思いっ切り抱き合いたかったが、互いに右足が動かず、ゆっくり抱きしめ合った。「僕もつっていた」と苦笑いの西田。それでも、仲間たちとの涙の抱擁は心地よかった。

 号砲は又野だった。2回だ。函館大有斗・堤口の内角直球を狙いすました。左翼芝生席に飛び込む今夏4発目。敗退した昨夏に続く2年連続での決勝の本塁打。先制アーチに「春(敗戦した全道準々決勝)に内角に詰まったので、腕をたたんで打とう」。思い通り、西田に並ぶ高校通算34発目で自らを援護した。

 投げても意地と気力だった。筋肉疲労は隠せなかった。中盤から、けいれん防止で食塩をなめマウンドに上がった。それでも8回途中に右足太ももの表と裏側がつった。前後して右手人さし指もつった。「僕が崩れたらチームが崩れてしまう」。投球ごとに「うぉりゃ」と気合を声に出した。3失点の3試合連続完投だった。

 好リードの西田も持ち味を発揮。遠投100メートル以上の強肩で、二塁への盗塁を2度刺した。スローイングのスピードも知れ渡り、仕掛けてくる相手も少ないが、今夏は3度すべて刺した。今大会2本塁打があり又野と合わせチーム6本塁打は、98年駒大岩見沢に並ぶ大会タイ記録。攻守で引っ張った。

 春甲子園で全国8強。以降はチームの立て直しに必死だった。「燃え尽きたというより少し勘違いしてしまった」(西田)。小技が売りの選手が振り回し、待球できず初球で凡フライを打ち上げた。歯車が狂い、春季大会は全道準々決勝で函館大有斗に敗退。「勘違いするな」。西田主将が何度も涙ながらに訴えた。

 夏甲子園は19年ぶり。その間、昨年も含め決勝で4度涙を流した。本命視されては惜敗続き。06年甲子園準Vの駒大苫小牧に被安打1で敗れたこともあった。河上敬也監督(51)は「過去の生徒が流した涙を生かすことができた」と目を潤ませ喜びをかみしめた。

 失敗を糧に、調整も“勝負”に出た。「地区前は抑え気味の練習で、かけだった」。意図的に選手の調子をずらした。地区予選後は、重たい竹バットだけで練習を続け、金属バットの解禁は南大会3日前。失敗を重ねた経験から生まれた考えで、地区0発から6本塁打と大当たり。ピークを合わせ、実った。

 チーム4試合連続無失策で挑む、夏の夢舞台だ。「忘れてきたものがありますので」と河上監督。又野が「ベストピッチングをしたい」と話せば、西田は「思い出に残る大会にしたい」と思いをはせた。この日も、移動のバス車中ではゆずの「栄光の架橋」などを歌い、踊り、気分を高めた。夏の甲子園初勝利、そして頂点へ。北照が夏の栄光に向かう。【村上秀明】