<高校野球岐阜大会>◇26日◇決勝

 土岐商が県岐阜商に4-3と競り勝ち、5年ぶり3度目となる夏の甲子園出場を決めた。主将の4番矢田凌一内野手(3年)が3打数2安打2打点、先発矢田純規投手(2年)が5回1失点と「矢田ブラザーズ」が大活躍。平均身長168センチの“小兵軍団”が大本命を打ち破る番狂わせを演じた。

 先発に抜てきされた背番号10を、1本のタイムリーが勇気づけた。1回、1死一、三塁。4番が真ん中低めの直球を食らいつくと、打球はレフトの前にポトリと落ちた。決勝の大舞台で優勝候補から先制点をもぎ取ったのは兄矢田凌。「あれでだいぶ楽にマウンドに上がることができた。いろんな意味でうれしかった」。誰よりも喜んだのは先発を任された控え投手の弟矢田純だった。

 25日の多治見戦(準決勝)でエース前田は8イニングを投げていた。決勝まで4試合で計32イニング。疲れの色が濃い前田を見て工藤昌義監督(45)は決断した。「今日の朝に本人に先発でいくぞと言った。まさかここまで抑えるとは…」。2年生左腕は伸びのある直球を主体に5回を1失点に抑えると、兄は7回にもタイムリーを放ち、2安打2打点。矢田兄弟の活躍で下馬評を覆した。

 1つ年上の兄を追いかけて来た。性格は兄が寡黙。一方、弟は明るい性格。今春までバッテリーも組んでいた兄は、右ひじを痛めて捕手をあきらめた。苦しみながらも背中でチームを引っ張る兄を尊敬してきた。スタンドで見守った兄弟の父由和さん(49)は「弟は今でも兄が一番の打者だと思っている。兄のことを抑えたいと思って野球をやっているんじゃないかな」としみじみと話した。

 兄弟物語は全国に舞台を移す。土岐商は過去2度、夏の甲子園に出場しているが、通算0勝2敗。弟矢田純は「甲子園でも兄と一緒にプレーしてみたい。もし投げることがあれば、ストレートで押していくようなピッチングがしたい」と甲子園に思いをはせた。昨夏4強の強豪・県岐阜商を破った実力は本物。“矢田ブラザーズ”を中心に土岐商が夢の舞台に臨む。【桝井聡】