<高校野球山形大会>◇28日◇決勝

 山形中央が延長12回、4-3で鶴岡東に競り勝ち、創部58年目で初めて夏を制した。21世紀枠での今春センバツに続く春夏連続の甲子園出場。2年生左腕エース横山雄哉が168球の力投で6安打3失点完投。序盤に3失点したが、4回以降は1安打無失点に抑え、山形の公立校では16年ぶり(94年=鶴岡工)となる夏の甲子園出場に導いた。

 エース横山が、振り向きざまに跳び上がった。延長12回裏、最終打者を右飛に打ち取った。雄たけびを上げながら、歓喜のナインと抱き合う。この夏5度目の校歌。そして深紅の県優勝旗に13校目の帯び名。山形中央が大きな歴史を刻んだ。

 6回以降の息詰まる左腕エース対決を制した横山は「(先攻の)延長戦になってからは0で抑え、1点を取ったら絶対に守り切るつもりでした。全部、強気で投げられました」と計168球を振り返った。

 決勝点にもドラマがあった。延長12回表、空振り三振した9番・奈良崎匡伸主将が、勝ち越しのホームを踏んだ。2死から1番細矢凛(ともに3年)が頭部に死球。臨時代走となった奈良崎主将が2番安部郷太(2年)の左前打と敵失で一気にホームに滑り込んだ。奈良崎主将は「ずっとここ(夏優勝)を目指してきたのでうれしい」。急きょ、細矢のバットで殊勲打を放った安部は「細矢さんが打たせてくれた」と先輩に感謝した。

 すべては4-14で日大三(東京)に逆転負けした今春センバツから始まった。横山を含む選手たちは悔しさを糧に、日大三の研ぎ澄まされた野球を全国基準と考えて練習。この日も球場入りの移動バスで日大三戦のビデオを見て、闘争心を高めた。OBで就任7年目の庄司秀幸監督(34)は「春があったから、この夏があった。選手たちは数段、成長した」とあきらめなかった粘りをたたえた。

 ナインは、庄司監督が2年生だった93年以来、17年ぶり2度目の決勝を制した。17年前の決勝で日大山形に1-20で完敗した庄司監督の果たせなかった夢も結実させた。その93年に生まれたのが現3年生たち。庄司監督は「先輩たちが築いてきた1球1球がつながった。ここが終わりではない。自分たちの野球を最後までやり切りたい」と意欲を見せた。

 チーム2度目の甲子園では、春に成し得なかった全国初勝利を狙う。横山は「夢の舞台にもう1度行ける。強い気持ちを持って、チームを日本一に導けるようなピッチングをしたい」と春の雪辱を誓った。【佐々木雄高】