生え抜きのベテランが、勝利をもたらした。ロッテ福浦和也内野手(39)が10年9月10日以来、自身5年ぶりとなる1試合2本塁打を放った。9日のオリックス戦で、今季初のスタメン出場。2回に、4年ぶりの本塁打となる先制ソロを放つと、逆転され迎えた7回には同点2ランを放った。チームは9回に勝ち越し、2連勝。開幕カード以来のカード勝ち越しで、貯金1とし、単独3位に浮上した。

 オープンスタンスで、大きなトップから振り出すスイングは鮮やかだった。1-3の7回2死一塁。福浦はオリックス東明の初球に反応した。「来るとは思わなかった」内角への直球144キロを振り抜いた。「少し詰まった。でも、詰まった分、切れなかったのかな」という当たりで、右翼ポールを直撃する同点2ランを放った。ダイヤモンドを1周すると、応援団から「福浦! 福浦!」の大合唱。誇らしげに手を上げて応えた。

 「できすぎです。できすぎです」と繰り返して笑った。2回には、同じく東明から先制ソロ。2本目が反応なら、こちらは読み勝ちだ。カウント2-0で打者有利となり、直球に絞った。甘い141キロをライナーで右翼席へ。11年5月8日以来の通算116号に、直後は「1、2の3で打ったら当たったよ。4年ぶりかぁ~。忘れかけていた感触」と、おどけていたが、その2打席後に今季2号。さすがに、本人も「不思議な感覚ですね」と驚いた。

 もっとも、それだけの用意を続けている。試合前のアップ。他の選手がファウルゾーンでストレッチを行うのを横目に、黒いリュックを持って外野の方へ向かうのが日課だ。中には、トレーニング用のボールやチューブ。独自メニューを欠かさない。「体調管理や準備だけはしっかり。トレーナーさんにもケアしてもらって」と控えめに話すが、周りは背中を見ている。「どんなに疲れてもやっている」(今江)。「こっちが勉強になる」(大迫トレーニングコーチ)。まさにお手本だ。

 この日の2発で通算1867安打。2000安打の目標を振られても「日々、準備。試合に出させてもらっている以上ね」と、やっぱり控えめだった。それよりも、勝ち越した後の9回の好機で凡退し「最後がダメ。反省しないと」。寡黙、誠実、支柱。福浦を表す言葉には、そんな文字がふさわしい。【古川真弥】