最後の打者ヤクルト雄平を打ち取ると、広島野村祐輔投手(26)は右拳で小さくガッツポーズを作った。9回5安打無失点で3勝目を挙げ、プロ初完封をマークした。完投すら13年7月9日DeNA戦(横浜スタジアム)以来だった。野村は「点をとってくれたし、守備にも助けられた。完封は意識していませんが、5回くらいから最後まで投げたいと思っていた」とほほ笑んだ。

 今季初めてバッテリーを組んだ石原との呼吸が抜群だった。「いろいろ僕のことを見てくれた。石原さんを頼りに、いい投球が出来てよかった」。緒方監督も「打者の反応を見ていた。持ち味を引き出してくれたし、祐輔もそれに応えた。バッテリーの勝利」と絶賛した。

 緩急を使い、伏線も張った。4回無死一、二塁。この試合初のピンチを背負い、山田を迎えた。3ボールにした後だ。セオリーは変化球。だがバッテリーは内角へ2球、しかも直球を選択した。見逃しと空振りでフルカウントに持ち込んだ。「あれが石原の度胸、観察眼」と畝投手コーチ。かわすよりも力勝負だった。勝負球は真ん中に入ったが、押し込んで一邪飛に抑えた。続くバレンティンは外角を見せ、最後は内角シュートで遊併殺に打ち取った。野村は「点数もあったし、逃げてはだめ。逃げる投球をしていたら味方に悪い」と攻め続けた。

 前日26日に新井が通算2000安打を達成した。チームは勢いのまま連勝し、2位中日にゲーム差なしに迫った。「運気をもらいました」と野村は笑う。最高の雰囲気のまま、広島が流れに乗った。【池本泰尚】