「星野のDNA」とくれば武勇伝? は絶対スルーできない。ウソかマコトか、その逸話には魅力が詰まっている。故人がこよなく愛した笑い話に敬意を表し、担当記者2人がピックアップした。

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 (1)シューズに鉄板 楽天監督時代、ミス連発の敗戦で大噴火。バックヤードの鉄扉を思い切り蹴り上げると、なぜか鉄扉がへこんだ。目撃複数。「万が一、護身のために特製シューズをオーダーしている」「足の指が異様に硬い」など諸説あったが、怖くて確認できなかった。

 (2)ブルペンから煙 中日の若手時代、キャンプのブルペンで投げるとなぜか、いつも、後方から煙が。振り返ると板東英二が焼きイモを焼いている。同じ右投げのエース候補を脅威に感じたベテランが、集中力をそらし、かつ自分の腹も満たすためだった…らしい。

 (3)雨男 現役時代、雨の登板にめっぽう強かった。突如として球速が上がり、スライダーのキレもアップした。土でぬかるんで黒くなり、見えなくなったプレートを踏まずに、少し前から投げていた…ようだ。

 (4)奇跡のぼうこう 番記者を集めての「お茶会」はほぼ毎日、長いときは3時間ほど。ホットコーヒーを飲み続ける。コーヒーには利尿作用があるのに用を足しに席を立つ姿を見た人はいない。「ぼうこうの容量が人間離れしている」「トークに没頭するため、大人用のオムツを着用している」など諸説あるが、これも怖くて確認できず。ちなみに「大学1年で、安いウイスキーを一気飲みさせられて以来」ほぼ下戸だった。

 (5)尋ね人 楽天監督就任1年目のキャンプ初日。沖縄・久米島で迷子になる。練習後に「ここから歩いて帰る」と帰路の途中で下車したが、土地勘がなかった。途方に暮れていると2人の小学生に遭遇。1時間以上かけ、3人で宿舎にたどり着くと「命の恩人だ」と、自分のおやつ用だったあんパンを渡した。総出で捜索した担当者らも命拾い。翌日から皇室クラスの? 警護態勢となった。

 (6)恐怖のドライブ 中日監督時代、負けた後のバス1号車が制御不能になった。運転席の真後ろに座った星野監督が「信号なんか止まらないで早く進め!」と運転手をどやし上げるため。シーズン終盤の1号車は空席が目立ち、後続車はすし詰めになったという。

※各項は生前の星野さんの証言と目視による確認に基づいています。(つづく)【宮下敬至、古川真弥】