強い! ヤクルトが延長10回サヨナラ勝ちで7連勝、「日本生命セ・パ交流戦」の首位に立ち、セ・リーグ3位に躍り出た。雄平の2本塁打に、敗戦濃厚の9回にはバレンティンの同点ソロ。最後は、再び雄平が押し出し四球を選んだ。小川淳司監督(60)が長く指導する選手たちが勝利への執念を体現。交流戦を追い風に一気に混セを演出する。

 午後10時目前の神宮に、次々と水しぶきが舞い上がった。延長10回2死満塁、先制ソロ、勝ち越しソロと2本塁打を放った5番雄平が押し出し四球を選んだ。「打つ気満々だったんですけど、うまく見逃せた。どんな形でも勝ちたかった。最高です」。ヒーローインタビューを終えると、青木も待ち構えていた。「あんなベテランが水をかけるのを初めて見た。青木さんらしくてすごくいい」とビシャビシャになって喜んだ。

 マンガのような劇的ストーリーで、「ヤクルトの星」たちがサヨナラ勝ちをもぎ取った。1点を追う9回は、4番バレンティンが、ソフトバンクの守護神森の高めに浮いたカットボールをたたきつぶした。完全なボール球をバックスクリーンに運ぶ圧倒的パワーで追い付くと、投手陣も粘り7連勝。交流戦首位で、セ・リーグ3位に躍り出た。

 小川監督は「最後まであきらめない。勝ちたい気持ちが出ている」と言った。温和な指揮官は、7連勝をかけた交流戦首位決戦の直前、武勇伝を語って闘魂アップを決め込んだ。アニメ「巨人の星」に夢中だった71年の中学3年時、最終回直前の試合中にスライディングで左腕をひねり、激痛に襲われた。

 「本当は病院に行かなくちゃいけなかったけど、最終回がどうしても見たくて仕方なかった」。完全試合を達成した星飛雄馬を、父の一徹が背負ってグラウンドを去る感動シーンを目に焼き付け「見ている時は夢中で痛みを忘れてたけど、次の日に病院に行ったら骨折してた」と笑った。

 痛みに負けない強い意思は、采配にも通じるのか。雄平は監督代行だった10年シーズンに投手から野手に転向。バレンティンは第1次政権の1年目、11年から主軸に据えた“小川チルドレン”たち。厳しく我慢強く起用してきた選手たちが大暴れし、チーム一丸で大きな1勝をつかみ取った。【前田祐輔】