巨人山口鉄也投手(34)が5日、都内ホテルで現役引退の会見を行った。通算642試合を投げ抜いた自身の左肩に感謝を込めて「こんなに使うとはびっくりしたよ、お疲れさま」と言葉をかけ、労をねぎらった。起床とともに左肩の状態に一喜一憂する日々に、自ら終止符を打った。

びっくり仰天な現役生活だった。「厳しいプロの世界で10年以上も野球ができるとは、夢にも思っていなかった」。育成出身左腕がジャパニーズドリームをつかみ、12年には日本ハムとの日本シリーズ第6戦で日本一の胴上げ投手になった。「マウンド上で阿部さんと抱き合えて、自分の野球人生で想像しないことが起きた」。年俸240万円の育成から始まり、8年目の13年オフには3億2000万円(推定)まで手が届いた。

己の腕一本で栄光をつかんだわけではない。育成時代に素質を見いだしてくれた小谷2軍投手コーチ、1年目の自主トレで野球のイロハを教えてくれた工藤現ソフトバンク監督、公私でお世話になった内海、現役時代の大半でバッテリーを組んだ阿部、信用し、起用し続けてくれた原前監督…。恩人は数え切れない。「一番を挙げるのは難しい。挙げたらきりがない」。心底から感謝を込めた。

だから最後も1人じゃなかった。会見終了後、杉内、村田、内海、坂本勇、菅野らが登場。1軍は移動休養日にもかかわらず、慕う先輩、後輩がサプライズで駆け付けた。山口鉄は「びっくりした…本当に自分は出会いに恵まれていた。全てが僕にとって財産です」と頭を下げた。第2の人生は「野球の楽しさ、感動を学ばせてもらったので、伝えられたら」と結んだ。【桑原幹久】