猛虎史上、最高の神様の誕生だ! 阪神原口文仁捕手(26)が、桧山進次郎氏(49=日刊スポーツ評論家)が持つ代打の球団最多安打記録に並んだ。左手小指の骨折から再起してこの日再昇格。8回の代打復帰打席で笠原から中前に運んだ。チームはこの日も敗れて17年ぶりの最下位危機が迫る中、明るい話題を提供した。

心温まるエピソードは朝、ニュースに目を通していた時に気付いたという。球団史に名を連ねた試合の直後、原口は引き締まった表情のまま、先輩への感謝を言葉に変えた。

「ああいう、すごい方が…。ありがたいです。そうやって打席に立たせてもらっているので、1本でも多く打てれば、と思っていました」

左手小指の骨折が完治しないまま、この日出場選手登録された。1軍再昇格の裏側に、西岡の配慮があったと知った時は驚いた。1日に戦力外通告を受けていた先輩は前日4日ヤクルト戦の試合前、金本監督との話し合いの場で1軍登録抹消を願い出ていたという。「原口の記録もかかっていますし、そっちを優先してください」-。痛みの残る左手に、自然と力がみなぎるのは当然だった。

出番は6点を追う8回裏に訪れた。先頭で代打登場。割れんばかりの大歓声は「集中していたので、そこまで聞こえませんでした」。6回まで2安打無得点に抑え込まれていた左腕笠原の初球。外角高めカットボールに食らいつき、中堅大島の前に落とした。これで今季の代打成績は52打数23安打。桧山氏が持つシーズン代打安打の球団記録に並ぶと、やっと歓声が耳に飛び込んできた。

9月21日に出場選手登録を抹消された時点では、今季中の戦列復帰は絶望的とみられていた。それでも懸命にリハビリを進めた理由は、決して記録だけではない。

「残り試合も少ないんでね。最後の最後まで、勝ってファンの方に喜んでもらいたいのが一番。その戦力になれるように、しっかり頑張りたい」

虎党が記録更新を望むなら、もちろん全力で塗り替えにかかる。【佐井陽介】

▼原口が8回に代打でヒットを放ち、今季の代打での安打が23本目。2リーグ制後、代打のシーズン安打記録は07年真中(ヤクルト)の31本だが、阪神では08年桧山の23本が最多で、球団記録に並んだ。