快足王の先輩、日刊スポーツ評論家の大石大二郎氏(60)が阪神ドラフト1位、近本光司外野手(24=大阪ガス)にエールを送った。近鉄での現役時代に、近本が目標とする「40盗塁&新人王」をクリアし、4度の盗塁王も獲得。現在社会人ジェイプロジェクトで監督を務める大石氏ならではの視点で、盗塁成功の極意を伝授した。

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プロは社会人と違ってデータ量も違い、けん制の速さなど技術も格段に違います。たとえけん制の癖が分かっても、次の試合では修正されていたり、逆手に取られることもあります。でもドラフト1位で自信を持ってプロに入ってくるのだから、まずは自分の盗塁スタイルで思った通りにやること。通用する、しないを肌で感じ、研究を重ねてくる相手の上をいくように技術を磨くことが大事です。

私は現役時代、特にリード幅を研究しました。走る雰囲気を出さなくても、速い選手はたくさんけん制を受けます。その中で逆を突かれても戻れる目いっぱいのリード幅を探すことです。わずか1センチ、2センチの差でセーフかアウトかになるわけですから。意識したのは捕手よりも投手です。打者に投げる時、必ず動く体の部分を見つけることに重点を置きました。当然、真っすぐより遅い変化球の方が成功率が上がる。バッテリーの配球を研究することも重要です。また、打者にも迷惑がかかるので、遅くとも3球目までに走ることを心がけました。

でも盗塁で一番大事なのは覚悟を決めての踏ん切り、思い切りでしょうね。盗塁の3要素にスタート、スピード、スライディングの「3S」があります。その中でもいいスタートが切れるかどうかで、成否がほぼ決まると言えます。勇気を持ってチャレンジしてください。「40盗塁&新人王」を楽しみにしています。