外角低めに伸びた直球に、2年連続MVPのバットがピクリとも動かない。1点を追う8回1死一、二塁。一打同点の場面で、巨人丸佳浩外野手(29)は1ボール2ストライクから、142キロの直球で見逃し三振に倒れた。FA移籍後初戦で、大瀬良からまさかの4打席連続三振。「結果が出なかったので悔しい。いい球投げていたと思います」。真っ赤に染まったマツダスタジアムが大興奮につつまれる中、口元を結んで三塁側ベンチに下がった。

オープン戦2試合、開幕セレモニーまでは拍手が送られた古巣の雰囲気が、試合に入ると一変した。1回の第1打席、ハーフスイングが三振と判定されると大歓声がわき起こる。4回は見逃し、6回は118キロのカーブで崩され、バットが空を切った。原辰徳監督は「何とか打線がね。0点じゃいけませんね。(丸は)すべて糧ですよ」と言った。

昨季マツダスタジアムでは2年越しの13連敗を喫するなど2勝9敗(1分)と苦しみ、4年連続V逸の鬼門になった。4年ぶりに復帰した指揮官は「勢いを付けさせると今まで以上の圧力がある。何とか先取点、先行できる形がとても大事なような気はしますね」と感じ取った。

開幕戦の試合前。選手の前に立ち、長いシーズンに向けて訓示した。「試合に出たらノビノビ、ハツラツと『陽』になろう。少々『陰』に入っても立ち直るように。全員が『陰』の気持ちを分かって『陽』に向けて戦う。最後の最後まで戦い抜こう」。原監督が指揮した12年間で5度開幕戦に敗れたが、そのうち4度はリーグ制覇した。「陰」から「陽」へ、30日から転じていく。【前田祐輔】