長嶋さん、見てくれましたか-。巨人丸佳浩外野手(29)が、観戦に訪れた長嶋茂雄終身名誉監督の前で躍動した。1回無死一、二塁の好機で先制の適時二塁打。5回には右中間席へ移籍1号ソロを放った。FAで加入した目玉を中心に打線が機能。4番の岡本和真内野手(22)が3回に2点適時二塁打を放つなど、序盤から自慢の攻撃力を見せつけた。

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丸が、病床から“恋文”を送ってくれたミスターに快打で恩返しした。1回無死一、二塁から、一塁線を破る先制の適時二塁打。長嶋終身名誉監督が笑みを浮かべる中、頭の上で両手で丸を作る「丸ポーズ」で喜びを表現した。試合直前、ベンチ前からあいさつし「身が引き締まりましたし、しっかり勝ちたかった」。思いをスイングに乗せた。

縁を感じさせる巨人での幕開けだった。古巣の広島戦で4打席連続三振デビュー。偶然にもミスターと同じ結果だった。「自分は足元にも及ばないので、恐縮ですけど…」と肩をすくめたが「悪いことを引きずらないように、意識している」とリセット。この日も2打席目に凡退後、3打席目で移籍後初本塁打を放ち、2安打3打点の活躍で本拠地開幕戦で初のお立ち台に上がった。

残留か移籍かの決断に揺れた昨年11月。1通の手紙が届いた。「一緒に野球ができたらうれしい」。地元千葉の大先輩・長嶋茂雄からのシンプルでも熱いメッセージに心を震わせた。「感激しましたし、うれしかったです」と大事に自宅に保管し、言葉はしっかりと胸に刻んだ。

丸少年にとって、野球観戦といえば東京ドームだった。初観戦だった98年の指揮官は長嶋監督。「テレビの中の方」で雲上人だった。ダイヤモンドの上から自身を見つめる姿に「野球に対して、情熱のある方だとあらためて思った。情熱を僕も負けないように持ち続けたいです」と誓った。ミスターからも求愛された屈指のバットマンが、その力を目の前で証明した。【久保賢吾】