G倒の突破口は? 評論家陣による阪神の戦いについての分析・提言や球界全体の話題、問題をプロの視点で語る日刊スポーツ「野球塾」。

今回は、権藤博氏(80)が14日からの巨人2連戦(東京ドーム)の戦い方について提言した。開幕から6戦全敗の宿敵を相手にいかに勝機を見出すか。【取材・構成=田口真一郎】

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開幕2カード目の東京ドームは、3連戦で阪神の7得点に対し、巨人は25得点。いわば、格の違いを見せられての3連敗だったが、プロの世界で1年間、やられっぱなしということはない。阪神は一時は最下位に沈んだが、各球団との対戦が2、3巡して貯金を作っている。これは評価に値することだ。

巨人打線と対戦するのは、投手コーチにとって頭が痛いだろう。特に2番坂本勇はスイングアーク(バットのヘッドが描く円弧)が大きく、少々、体勢を崩されても、鋭い打球を放つことができる。3番丸は「人間レベル」ではない。コンパクトにどんな球でも打てる。

抑えるのは容易ではないが、まず言えるのは「踏み込ませるな!」ということだ。外角の配球が中心になると、相手打者もどんどん踏み込めるようになり、外角の厳しいコースでも腕が伸びて、打たれる。内角球の使い方が重要になるが、何も内角を使って、打ち取ろうと思わなくていい。ボールになってもいい。四球を出すぐらいの覚悟でいいんだ。とにかく相手に簡単に踏み込まれるような状態にもっていかないこと。

そしてもう1つ、提言がある。「勝負するか、否か」。そういう腹づもりでマウンドに上がるのはどうだろう? どの打者に対しても、まともに勝負する必要はない。勝負しないと決めたら、徹底的に避ける。いらぬ神経を使わずに、テンポよく4球、ボールを投げる。極端なことを言えば、2死走者なしで坂本勇を迎えた時に、申告敬遠してもいいんだ。「坂本、ここはパス…」というように。その分、次の打者に全力で勝負する。

阪神の先発は、青柳、岩田か。何千万円の給料の選手が3億円も4億円ももらっている選手と戦うわけだろ?「僕はまだそんなにお金もらっていません。見えを張りませんよ」。それぐらいの気持ちで投げればいいんだ。

巨人は菅野も先発する予定だが、バタバタと三振を取るタイプではなく、コンビネーションで抑えていく投手だ。とにかくバットを振り切ることだ。振り切れば、難しいコースでもファウルで逃げられる。何でも球種を持っているが、ファウルにされると困るよ。スライダーが多くなる。それを考えると、ルーキーの近本はしっかりと振れている。内角を攻められてもファウルで持ちこたえられる。柳に抑えられた11日の中日戦では木浪が最も力強いスイングを見せていた。とにかく振らないといかん。「投手はいかに踏み込むか、打者はいかに踏み込めるか」。勝利の鍵はそこにある。

▼阪神は巨人戦で今季初戦から6連敗。これは41年6連敗、67年7連敗、87年7連敗に次いで4度目だ。今季は6試合を行い、いまだにリードを奪った場面がない。3回までの総失点は19点で、1試合平均3・2失点。他球団との33試合では36失点で、平均1・1失点。序盤の劣勢を挽回できないまま、黒星を連ねてしまった。