日刊スポーツ評論家陣が語る「野球塾」は、阪急ブレーブスのエースとして黄金期を支えた元中日監督・山田久志氏の登場。通算284勝をマークした最強サブマリンは、阪神が後半戦に巻き返しをはかるために「先発力」をポイントにあげた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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このままいくとセ・リーグのペナントレースがつまらなくなる。巨人が独走気配をみせているが、それ以外の全5チームが借金を背負い込んでいるなんて情けないね。

どのチームも「連勝」「連敗」が目立った前半戦だった。なかでも広島はまさかの大失速。これは異変としか言いようがない。巨人も投打に外国人が機能しなかった。

だが巨人は前半戦最終戦で阪神に3タテを食らわした試合が示したように、選手を適材適所に登用した。それが選手を“その気”にさせて結果につながったということだろう。

例えば、リリーフの起用法にしても、セオリーで考えにくい戦術もあった。担当コーチの発案なら拍手を送りたいが、おそらく原監督の意見だろう。“監督力”をみせつけられた。

ちょっと気になるのは小林、炭谷らの捕手を回しながら起用していること。常勝チームとして連覇をしていくには正捕手の存在は大きい。ここはお手並み拝見だね。

さて、阪神。この戦力でよくやってきた。懸案だったセンターラインは、捕手の梅野、二遊間の糸原、木浪、中堅の近本で固まりつつある。監督、コーチが期待した以上の働きだったのではないだろうか。

問題は打力だが、現状で打線の組み替えで好転するとは思えない。またこの時期に新外国人ソラーテ頼みというのであれば、わたしに言わせれば時すでに遅しだろう。

阪神は両リーグトップの防御率3・40が示すように投手力で勝負ができる。ただ、先発ローテーション入りする人材で勝ちが先行するのは、岩田1人というのはいかにも寂しい。

先発3・73、リリーフ2・76という数字をみるとリリーフ陣の奮闘ぶりがうかがえる。夏場の連投はさらにきつくなるから、ここからは先発ピッチャーが意地をみせることだ。

先発は6回を投げて、2、3点に抑えればOKなのかもしれない。だが、できるだけ長いイニングを投げて、ジョンソン、ドリスにつなぐぐらいの役割を果たすべきだろう。

後半戦スタートの対戦相手の中日は、アルモンテが加わって打力が上がってきたから、なおさらだ。巨人の「1強」を許さないためにも、「先発力」で対抗したい。